物事が変化し続け、不確実性が高まるばかりの社会において、「何を軸に子育てすればいいのか」と迷っている人は少なくありません。しかし、そんな中でも、それぞれの分野で新しい境地を切り開き、活躍しているリーダーたちは、確固たるポリシーを持ち、「ぶれない子育て」を実践しています。金融・生命科学・教育・医学などの分野で活躍する5人の女性リーダーに、子育てで大事にしていることや、キャリアとのバランスなどについて聞きました。世の中がどう変わろうとも道を切り開いていけるタフな子どもを育てるヒントが、きっと見つかるはずです。

女性リーダーに学ぶ 新しい子育て

サイエンスを子育てに取り入れるメリット

 「妊娠・出産するまで、女性だからという理由で不利益をこうむったり、大変だと感じたりすることは個人的な体験としてはありませんでした」

 父親をはじめ、周囲に医師が多い環境で育ったという高橋祥子さん。将来を考えるときも「医師か」「医師以外か」といった選択肢で考えていたといいます。「病院に見学に行ったら、当たり前ですけど、病気の人しかいなくて衝撃を受けました。病気になってから治す医療はもちろん必要ですが、病気になる前に、病気のリスクを予測して回避できないかと、農学部へ進み、生命科学の視点から、生活習慣病の予防のメカニズムについて研究しました」

 東京大学大学院博士課程在学中の2013年に、個人向けに遺伝子解析サービスを提供するジーンクエストを起業。それぞれの体質や疾病リスクなど、300項目以上もの遺伝子を解析して、生活習慣改善の助言なども行うサービスを提供しています。「どんどん高齢化が進む日本で、研究したことを社会実装するために起業しました。研究者からビジネスの世界に軸足を移したわけではありません。サービスと研究を両輪で走らせる仕組みをつくれば、サービスが広まれば広まるほど、データが蓄積され、まだ分かっていない病気のメカニズム解明など新しい研究にも役立てることができると考えました

 2017年には、ジーンクエストがユーグレナのグループに入り、高橋さんは翌年、ユーグレナ執行役員に就任。2020年に出産を経験し、現在は1歳児を育てる母親でもあります。

 「育児が大変なのは母親のせいではありません」。妊娠・出産、育児のあまりの大変さに疑問を抱いた高橋さんは、自分の専門分野である生命科学の視点から読み解き、無理なく子育てをするための仕組みづくりを行ってきました。

 「人間の子どもはほかの動物と比べても明らかに脆弱に生まれてくる仕組みになっています。『人間の子育ては集団で行うもの』ということが、生物のシステムとして組み込まれていると考えられます。科学的に見て、育児は母親1人に押しつけるようなものではないんです。母親が自分自身を責めたり、根性論で乗り切ろうとしたりしないほうがいいと考え、実践しています」

ジーンクエスト代表取締役の高橋祥子さん
ジーンクエスト代表取締役の高橋祥子さん

 起業以降、ほぼ休むことなく事業に専念し、まもなく創業7周年というタイミングで出産した高橋さん。2カ月の産休を取ることに不安もあったものの、復帰後、チームの成長を感じたといいます。

 「経営経験が育児に生かされると同時に、育児の経験が経営にも生かされている」と話す理系リーダーの高橋さんが実践する「新しい子育て」とは? 女性のリーダーや研究者、起業家を増やすために社会全体で取り組みたいことについても詳しく聞きました。

理系リーダーの高橋さんが子育てで強く意識し、実践してきた(いる)こととは? (1) 科学的に見て、人間の育児は1人に押しつけるものではない→チーム育児を導入 (2) 子どもは親の価値観に影響を受ける→将来の選択肢を狭めないよう、子どもの心理的安全性を確保 (3) 企業経営は人育てでもあり、育児と共通項が多い→経営で学んだこと、育児で学んだことを相互に生かす

次ページから読める内容

  • 遺伝子から考えて導き出した、高橋さんの「最適解」とは
  • 育児に関しては根性論がまかり通っている
  • 不在で会社のチーム力は成長
  • 理系に女性が少ないのは環境要因
  • 「生命科学的視点」は力になる

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