パートナーのDV/モラハラ、依存症、離婚、わが子のいじめ加害……。こうした悩みは、人に相談しにくく、自分たちだけで抱え込んでしまいがちです。しかし、問題を放置してしまうと、自分がつらいだけではなく、子どもの健全な発育が妨げられてしまうことも。悩みを解決するためには、視野を大きく広げ、問題が起こる根本原因や、影響が及ぼす範囲などにも目を向ける必要があります。共働き家庭のケースを想定し、専門家の取材を通じて、出口戦略を考えていきます。

離婚前から子どもは傷ついている

 人には言えない悩みの1つに「離婚」があるかもしれません。毎日絶えない夫婦げんかにこらえきれず、離婚が脳裏に浮かぶ。けれど、子どものことを考えると離婚しないほうがいいのではないか、となかなか離婚に踏み切れない人は少なくないのではないでしょうか。そして、子どもを理由に離婚をすべきかすべきでないかで迷っている人の中には、離婚をすることで子どもを傷つけてしまうのではないかと悩む人がいるかもしれません。

 「子どもの『心の傷つき』は、離婚前から始まっています」と話すのは、広島市立舟入市民病院で小児心療科主任部長を務める、小児精神科医の黒崎充勇さんです。

 「これまで、両親の離婚が理由で精神的なダメージを受けた子どもを数多く診てきましたが、離婚自体が子どもを傷つけるのではなく、離婚に至るまでの父母のいさかいが大きな原因になる場合が多いと感じています。何歳であっても、子どもにとって両親がけんかをすると気になるもの。それが一過性のものであればそれほど問題ではないのですが、長く続く場合、子どもはけんかを繰り返す両親を見て、『昔みたいに家族仲良く過ごすことはもうできないのかな』と心が苦しくなってしまいます。仮に円満離婚であったとしても、子どもにとっては片方の親と離れることになるので、少なからず傷ついていると言えるでしょう。このように、一般に離婚は、子どもにとってマイナスなものと思われがちですが、プラスに働く場合もあります」

 一方、両親のいさかいを長期的に目の当たりにしたり、両親が離婚した後に同居している親が打ちひしがれている姿を見たりすると、子どもはいい子になる傾向があるのだそう。普段の仕事や、夫婦関係のことで手いっぱいになっている親は、「いい子でいてくれてよかった」と思うかもしれませんが、その「いい子」は子どもの心の成長にとって危険なサインだ、と黒崎さんは言います。

この記事で読める内容
●両親の離婚後、子どもがいい子になる心理とは
●いい子になる以外に、子どもが起こす反応とは
●子どもの反応を放置したら、思春期に爆発するリスクあり
●子どものケアの前に、親が自分自身のケアを先にすべき理由とは
●離婚後、子どもにしてはいけない「NG行動」