生活の中で触れる文書は多様化し、デジタル空間にも広がり、「読解力」の定義や教育方法は、どんどん変わっています。子どもたちは、どのような「読解力」を伸ばせば、これからの世の中で豊かに学び、働き、生きることができるのでしょうか。AI時代に必要な力や、幼児から家庭で取り組める習慣、読解力重視の傾向が強まる中学入試に備えるヒントなど、読解力について多角的に迫ります。

読解力とは情報を得る力

 中学受験で求められる読解力はどのような力でしょうか。学習塾enaの小学部部長で、都立中受検クラスの作文指導の責任者でもある青木繁和さんは、「そこに込められているものを、よりたくさん拾ってこられる力」だと話します。

 「例えば、『私はこっちの料理もおいしいと思う』という例文から、いくつの情報を読み取れますか?」と青木さん。

1 文面通り、私は「こっちの料理」のことをおいしいと思っている
2 こっちの料理「も」に着目すると、他にも料理があって、そっちの料理のこともおいしいと思っている
3 「私は」に着目すると、そこには他にも誰かいて、その人はこっちの料理をおいしいと思っていない
4 「私は」と「も」の両方にも着目すると、もうひとりもそっちの料理のことはおいしいと認めている

 答えは上の4つです。「このように、与えられた情報からより多くの情報を得る力は中学受験で重要になってきています」

適性検査で読解力が必要な理由

 公立中高一貫校の適性検査では、知識を問う問題が多い私立中入試とは異なり、「思考力・読解力・技術力」の3つの力が問われる出題がされています。公立中高一貫校の適性検査では、小学校6年間の指導要領を逸脱した出題はできません。しかし、教科書に出ている知識や技能をそのまま出すのでは、多くの子が満点を取る可能性が高く、選抜ができません。

 そこで、適性検査の問題は、知識を問う問題ではなく、教科横断型の、複合的な出題とすることにより、能力を測ることのできるような問題となっています。題材として小学校で学習するものとは重ならないものも出題されることもありますが、登場人物の会話などをヒントにすることによって、答えにたどり着けるように工夫されています。

 「そこで問われるのが思考力・読解力・技術力です。問題文の登場人物たちが計算のやり方を話し合ったり、データやグラフが提示されたりするので、子どもはそこから情報を読み取り、自分で考えることによって問題を解いていきます。文章を読んで、それを要約し、自分の体験をもとに考えをまとめる作文も出題されるので、読解力や思考力、書く力を高めることが大切です」

大学入試改革の影響で私立中入試でも読解力が重視されるように

 知識偏重型といわれていた私立中学の試験も、ここ数年で読解力を重視する方向にシフトしてきています。 そのきっかけとなったのが、大学入試制度改革です。平成30年に文部科学省から改革の内容が発表され、改革の骨子となる「学力の3要素」が示されました。それは次の3つです。

・知識 技能
・思考力 判断力 表現力
・主体性 多様性 協働性

 「ここで注目したいのが、『思考力 判断力』です。これらは、公立中高一貫校の適性検査で必要となる読解力に通じる力です。実は、大学入試改革のサンプルとして示された問題は適性検査型の問題ととてもよく似ています」

 大学入試改革の発表にいち早く反応したのが難関校のひとつである開成中学です。「発表後すぐの理科の入試では、小学校では習わないクロマトグラフィーの実験から何が分かるか、資料を読み取らせその場で考えさせる問題が出ました。国語でも、会話やグラフをもとに考えさせる問題が出て、話題になりました。他の御三家や上位校でも反応は早く、令和2年入試の出題を見ると、多くの私立中で、国語に限らず読解力を問う傾向になっています」

 公立でも私立でも、読解力が中学受験(受検)生に求められているのです。それでは、中学受験(受検)に対応できる読解力を、家庭ではどのように育んでいけばよいのでしょうか。

子どもの読解力に効くのはどんなセリフ?

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