子どもが巻き込まれる性犯罪が後をたちません。わが子を守り、また、正しい知識を持たないがゆえの加害者にならないよう、親は「性教育」に向き合い、性について伝えていかなければなりません。とはいえ、親自身はそこまで性教育に触れてきたでしょうか。「子どもに、一体、何をどう伝えればいいか分からない」という人に向けて、家庭で始める性教育のノウハウをお届けします。

 幼い子どもへの性犯罪の報道を目にするたび、わが子に「自分で身を守れるような性教育をしなければ……」と、ちょっとした焦りを感じることはないでしょうか。

 ただ、その際、「リスクマネジメントの一環として性教育を位置づけてしまうと、本質から少しずれてしまうかもしれません」と話すのは、京都教育大学元教授で、人権に基づくセクシャリティ教育・ジェンダー教育が専門の関口久志さんです。どういう意味でしょうか?

 「昨今の社会を見ているとやむを得ないと思います。ただ、妊娠するから、性病のリスクがあるから、といった、いわゆる『脅し』の性教育では、子ども自身が、性を肯定的に捉えることができなくなってしまいます。恋をすること、キスやセックスをすること、妊娠や出産をすること自体は、お互いが満足していれば幸せなことです。問題なのは、それらの行為を押し付ける性暴力だったり、責任を取れない状態でキスやセックスをしたりすることですよね」

 性教育の目的には、望まない妊娠を防ぐことや、子どもが性暴力の被害者・加害者にならないためのことも、もちろん含まれます。ただ、小学生の性教育においては、他人と心地よい人間関係を築いて、相手を尊重できるようになることの大切さについて伝えるのを忘れてはならないと、関口さんは強調します。

 とはいえ、「それでは一体、何をどう伝えていけばいいの?」と、親としては思ってしまうかもしれません。例えば、こんな悩みはどうすればいいのでしょうか。

 次のページからは、関口さんに、こうした親たちの疑問に答えてもらうと共に、リスクマネジメントだけではないポジティブな声掛けをしていくために、私たちが知っておきたい、思春期における「性教育のゴール」について詳しくお聞きしました。