一般的に中学受験の準備は小学3年生の2月から始まります。ただ、親子でよく話し合った上で通塾をスタートしても、高学年になって思うように成績が上がらなかったり、地元の公立中に行きたい理由ができたりして、「やっぱり受験をやめる」となる可能性はあります。逆に、中学受験をするつもりがなかったのに、途中から「やっぱり受験しようかな」と迷い始めるケースもあるでしょう。そんな重大な「方向転換」に、親は、そして子どもはどのように対処すればいいのでしょうか。中学受験の専門家や、方向転換を経験した当事者たちに取材しました。

 中学受験と言えば小3の2月から準備を始めるのが一般的です。しかし中には、小6になってから「やっぱり受験をしたい」と方向転換することもあります。そのような「駆け込み受験」をしようと思った場合、親はどのような行動を取るべきなのでしょうか。約20年にわたって私立中学の受験事情を取材してきている教育カウンセラーの鳥居りんこさんに、駆け込み受験を成功させるためのノウハウを聞きました。前編では子どもに最適の学校を見つける方法を、後編では模擬試験の選び方や、勉強の方法、「親塾」を選ぶ場合の成功のコツなどについて解説します。

前編 駆け込み受験 親が腹くくれてないならやめた方がいい ←今回はココ
後編 模試で偏差値30台も 駆け込み受験は現状知るが最優先

「落ちたら公立に行けばいい」と思うならやめたほうがいい

 「親が腹をくくるのが駆け込み受験 くくり切れていないならやめたほうがいい」

 鳥居さんは駆け込み受験をしようとする親に対して、まずこのような厳しいアドバイスをします。「小3の2月から参戦するのがデフォルトとなっている中学受験に小学6年生から参加するのは、親の強い覚悟が必要です。他の人が3年間かけてきた準備を半年ほどで行わなければならない時間的な厳しさ、学習指導要領を逸脱した試験問題に取り組む学力的な厳しさに立ち向かわなくてはならないからです」

 また、「ある程度の偏差値の学校に落ちたら公立中学校に行けばいい」という考えでの駆け込み受験にも鳥居さんは否定的です。「親は軽い気持ちかもしれませんが、実際に受験する子どもは傷つき、お金も無駄にするだけです。軽い気持ちの駆け込みはおすすめしません

 子どもが「やっぱり受験したい」と言いだしたかもしれません。それについても鳥居さんは「中学受験において、子どもの『受験したい』は実際は子ども自身の意思ではなく、親や周囲の影響によるものです」とも指摘します。「受験を子どもの責任にするのではなく、夫婦でよく話し合ってから決めてください。『駆け込み受験にはなるけれど、それがわが子の人生にとって一番いい道だ。だから絶対に良い受験にしよう。1つは合格を取り、成功体験を積んで次の進路に進もう』という意思を夫婦で確認できたなら、挑戦してもよいと思います」

 それでは、強い信念を持って駆け込み受験をしようと決めた場合、どのようなことをしたらよいのでしょうか。鳥居さんは親がすべきことを次のように説明します。