一般的に中学受験の準備は小学3年生の2月から始まります。ただ、親子でよく話し合った上で通塾をスタートしても、高学年になって思うように成績が上がらなかったり、地元の公立中に行きたい理由ができたりして、「やっぱり受験をやめる」となる可能性はあります。逆に、中学受験をするつもりがなかったのに、途中から「やっぱり受験しようかな」と迷い始めるケースもあるでしょう。そんな重大な「方向転換」に、親は、そして子どもはどのように対処すればいいのでしょうか。中学受験の専門家や、方向転換を経験した当事者たちに取材しました。

残り4カ月での参戦。中学受験経験のない両親はとまどって……

 夫のうつ病体験を描いた『ツレがうつになりまして。』(幻冬舎)の著者、細川貂々(てんてん)さんは2020年1月に長男ちーと君の私立中学受験を体験しました。受験を決めたのは19年の9月、小6の夏休み明けです。細川さんが住む関西地方では私立中学の入学試験は1月に行われるので準備期間は4カ月しかありません。しかも塾に行かずに、夫のツレさんが勉強を教えて、見事、関西の私立中学の特進コースに合格したといいます。

 一般的に「中学受験の準備は小3の2月から。親塾は避けたほうがよい」と言われる中学受験の世界で、「小6の9月からの駆け込み受験」「しかも親塾」で合格を勝ち取った細川さん親子。4カ月間の受験生生活をどのように送ったのか話を聞きました。


 細川さんの長男ちーと君が通っていた小学校はクラスの半分以上が中学受験をする校風。細川さんもちーと君が小4の頃から「中学受験をする?」と何度も確認していました。しかしちーと君はいつも「僕は勉強がイヤだから公立中でいい」という返事。小6になる頃には細川さんも夫のツレさんも「公立中に進んで高校受験かな」と思うようになっていました。

 ところが小6の夏休み明け、ちーと君が「オレ、中学受験する」と宣言して両親を驚かせます。

『なぜか突然、中学受験。』(創元社)より
『なぜか突然、中学受験。』(創元社)より

 「仲のいい友達の多くが中学受験組だったこともあり、息子にはずっとモヤモヤがあったのだと思います。私も、公立中だと学校に行かなくなるかもしれないと不安に思っていました。その状況下で息子は私立中なら学校に行けるかもしれないと思ったようです。親子で話し合い、息子の決意に揺るぎがなかったので、家族一緒に頑張ろうということになりました」

 とはいえ、細川さん夫婦は2人とも中学受験の経験がなく、始めはどうしたらいいか戸惑ったといいます。

 伏せ字の答えは4ページ目に! 次ページから詳しく解説します。