一般的に中学受験の準備は小学3年生の2月から始まります。ただ、親子でよく話し合った上で通塾をスタートしても、高学年になって思うように成績が上がらなかったり、地元の公立中に行きたい理由ができたりして、「やっぱり受験をやめる」となる可能性はあります。逆に、中学受験をするつもりがなかったのに、途中から「やっぱり受験しようかな」と迷い始めるケースもあるでしょう。そんな重大な「方向転換」に、親は、そして子どもはどのように対処すればいいのでしょうか。中学受験の専門家や、方向転換を経験した当事者たちに取材しました。

 前回の記事では、親から「中学受験をやめようか」と言い出すパターンについて取り上げ、親が見直すべき5つのことをお伝えしました。しかし、子ども自身が「やめたい」と言い出したり、子どもが勉強に乗り気でないような様子をみて親が中学受験をやめようかどうかを検討したりするケースもあるでしょう。そんなときは、「この子にとって、これでよかったのか」と親が悩んでしまうかもしれません。しかし、教育家の小川大介さんは、「これまでに中学受験をやめた多くの子どもを見てきており、その後の経過も知っていますが、将来はそんなことで簡単に左右されません」と断言をします。

 「小学生の成長は速く、記憶の更新速度も速いものです。過去の記憶に縛られることがないので、あっさりと未来をつくっていきます。受験勉強をやめて1カ月もすればケロッとして、次のことをやっているはずです。『本当は、2、3日で気持ちを切り替えられたけど、あまりに早く平気な顔をするとママに悪いから、ちょっと落ち込んでおこうと思った』と教えてくれた子もいました」と小川さんは笑います。

 ただし、中学受験からの撤退は、もともと地元の公立中学校も進学先の一つとして候補に入れている家庭が取るべき戦略です。「友人関係が不安で地元の公立中学校に進学したくない、といったような場合は、中学入試までたどり着けるように戦略を構築することが前提となります。そういう場合に子どもが『勉強がつらいからやめたい』と言い出したら、早めに学習方法や志望校の見直しをおすすめします」

 本記事では、もともと地元の公立中学校も進学先の一つとして候補に入れている家庭が、中学受験からの撤退を決めたケースにおいて、撤退を子どもにとって「挫折」にしないために親が言動で気を付けるべき点、公立中学に進学した後に、高校受験を成功させるポイントなどについて紹介します。

 子どもの様子から、中学受験をやめるか、そのまま続けるか、親が判断に迷うこともあるでしょう。2つのケースで見ていきます。