もうすぐ、待ちに待った夏休み! コロナ禍で旅行の計画が立てにくく、「まだ何の予定もない」という家庭も少なくないでしょう。それでも充実した思い出の夏にするために、ぜひ提案したいのが、短期の習い事&個別指導や近場の自然体験などを通じて「〇〇ができるようになった!」という達成感を味わわせてあげること。数日~数週間で達成感を味わえたら、親子にとって自信になるはず。遠出できなくても、この夏を楽しく、有効に過ごすための「楽しい・近い・短い」習い事や体験を紹介します(東京都に緊急事態宣言が再び発令されました。状況に応じて、密にならない場所や時間帯を選ぶなどして感染対策に留意しましょう)。

親子三世代で動物学者の今泉さん 体験がその後の「土台」に

 小学生の子どもたちに大人気のシリーズ『ざんねんないきもの事典』(高橋書店)で、動物たちの知られざる生態を楽しく伝えている、動物学者の今泉忠明さん。子どもたちが日本の山や森へもっと興味を持ち、多様な視点で自然体験をしてほしいと、新著『あえるよ! 山と森の動物たち』(朝日出版社)で、さまざまなヒントを提案しています。

 父親が動物学者だった今泉さん。小3の頃から山でネズミ捕りのわなをしかけ、ネズミの標本を作る「お手伝い」をして育ったと言います。今泉さんは、父親に「勉強しろ」と言われたことはなく、それどころか「勉強を先にすると頭が『ませる』からよくない。机の上で思いつきだけを言うような、頭でっかちの人間になってしまう」という考え方で育てられたと言います。

 自身も動物学者になり、やがて親になった今泉さんは、息子が小さい頃から親子一緒に多様な自然体験をして育て、結果的に息子も動物学者になりました。

 「子どものときは、その後の興味・関心や学びの『土台』になる『体験』を積むことが大事だと思います」と今泉さんは言います。

 とはいえ、昔と違って、都会には子どもたちだけで遊び回れるような自然環境は乏しく、「勉強させないで遊ばせる=自然の中で多様な体験をする」という状況には必ずしもならないのが悩ましいところ。親世代も子どもに伝えられるほど、自然についての知識や体験を持ち合わせていないかもしれません。

 しかし少し視点を変えれば、近場でも自然に触れる体験は可能で、さらにその体験を自然への興味・関心を伸ばすきっかけにすることができると今泉さんはアドバイスします。「親は、自然についての知識や体験を持っていなくても、長く生きている分、『知恵』は持っているはず。その知恵を使って、子どもに駆け引きを仕掛け、『ちょっと背中を押す』ことが、子どもの意欲を引き出すことにつながるでしょう」

動物学者の今泉忠明さん。日本の山にいる身近な動物についての面白いエピソードを描いた『あえるよ! 山と森の動物たち』(朝日出版社、共著)が6月に発売された
動物学者の今泉忠明さん。日本の山にいる身近な動物についての面白いエピソードを描いた『あえるよ! 山と森の動物たち』(朝日出版社、共著)が6月に発売された

 子どもを主役にする時間を設定し、その時間は子どものペースに合わせることも、今泉さんは提案しています。普段は多忙な共働き親も、そうした時間を取りやすいのが、比較的時間に余裕のある夏休みかもしれません。近場でできる「視点を変えた」自然体験や、子どもの興味・関心を伸ばす親の3つのコツ、声かけのヒントなどを上編・中編・下編の3回にわたって詳しく説明します。

上編 3歳児と富士山登頂 動物学者「体験最重視」子育て ←今回はココ
中編 夏の自然体験 最も大事なのは「子が主役」の意識
下編 今泉忠明 「親らしさ」よりも「仲間感覚」を大切に
「興味・関心を伸ばしたい!」 親ができる3つのコツ (1)「ちょっと背中を押す」声かけを意識 (2)子どもを主役にする日をつくり、時間割を考え、ペースを合わせる←今回はココを解説 (3)「親らしさ」よりも「仲間感覚」を大切に