この時間の主役は誰か、と意識することが大切

 「当時、私がよく富士山で仕事をしていました。息子が『登ってみたい』と言ったので、『じゃあ、登らせてあげようか』といった感じで、無理にやらせようと思ったわけではありません。子どもにはヘルメットをかぶらせて、手をつないで歩きました。疲れたと言うたびに頻繁に休憩し、道の脇に寝袋を置いて昼寝も挟み、頂上まで登って降りて、計4日間かかりました」

 大人の忍耐力に驚いてしまうエピソードですが、今泉さんは言います。「子どもを頂上まで登らせてあげるのが第一目的だったので、子どものペースに合わせて、子どもが休憩や昼寝をしている間、親はそばでお茶を飲んだり、写真を撮ったりして待ちました

 3歳で富士山はハードルが高くても、親子で山登りやハイキングに出かけるときに、参考にできそうな考え方です。「子どもを連れて行くなら、子どものペースで歩くことが大事だと考えています。計画段階から子どもと一緒に地図を見て、子どもにルートを考えさせてみてもいいかもしれません」

 「この時間の主役は誰か、と意識することは大切だと思います。この夏休み、子どもを主役にする日を例えば2、3日つくったら、大人は時間や気持ちに余裕を持って、主役にペースを合わせるのはいかがでしょう。子ども優先と決めた日については、子どもが中心となる計画を子どもと一緒に立てることをお勧めします。後述しますが、それを自由研究にしてもいいと思います」

 「視点を変えた」自然体験や、子どもの興味・関心を伸ばす親のコツ、声かけのヒントなどを具体的な内容は中編と下編でお伝えします。ご期待ください!

上編 3歳児と富士山登頂 動物学者「体験最重視」子育て ←今回はココ
中編 夏の自然体験 最も大事なのは「子が主役」の意識
下編 今泉忠明 「親らしさ」よりも「仲間感覚」を大切に

取材・文/小林浩子(日経xwoman DUAL)、イメージ写真/PIXTA


今泉忠明(いまいずみ ただあき)
今泉忠明(いまいずみ ただあき) 1944年東京都生まれ。東京水産大学(現・東京海洋大学)卒業後、国立科学博物館の特別研究生として哺乳類の生態調査に参加。以降、文部省(現・文部科学省)の国際生物学事業計画調査など数々の研究調査に参加。日本動物科学研究所所長、伊豆高原ねこの博物館館長。近著は、日本の山の動物を文章とマンガで描いた『あえるよ! 山と森の動物たち』(朝日出版社、共著)。『ざんねんないきもの事典』(高橋書店)など監修多数。