子育て中は、仕事に家事・育児に毎日大忙しで、職場と自宅の往復だけになりがちです。それに加えて、コロナ下でリモートワークが普及したことで、人に会う機会はさらに限られています。新たな人脈を築いたり、世界を知ったりする刺激やチャンスが減ると、視野が狭まり仕事もマンネリ化、キャリアも停滞気味になってしまうけど、どうすればいいのか分からない……と悩む人は多いのではないでしょうか。そこで、本特集では、そんな閉塞感を打破し、仕事に余白をつくるためのヒントを紹介します。

余白は働きやすさにもつながる?

 「いいアイデアやアウトプットの裏側には余白がある」。仕事において余白が大事だということをよく耳にしますが、DUAL世代は、子育てと仕事の両立で手いっぱい。「子どものお迎えまでに目の前の仕事を終わらせるのが最優先」と、仕事に余白をつくる余裕なんてないと感じている人は少なくないかもしれません。しかし、神経科学の観点からは、余白と発想には正の相関関係があり、余白の重要性は高いのだそう。そのため、余白をつくらず、目の前のタスクをこなすことだけに目を向けてしまうと、斬新な発想が湧いたり、仕事の幅が広がったりする機会を逃してしまう可能性があるのです。

 とはいえ、余白をつくろうと思っても、なかなか難しいもの。子育てと仕事の両立で忙しい中、「余白をどのようにつくればいいか見当もつかない」という人もいれば、「余白をつくりたいけれど、周りに仕事をしないで遊んでいると思われたら嫌だな」と思う人もいるでしょう。

 余白をつくることを個人任せにせず、組織として取り組んでいる会社もあります。米アップルの初代マウスをデザインした実績を持つ、世界に9つの拠点を構える米国カリフォルニア州発のデザインコンサルティング会社IDEO(アイディオ)もその一つ。企業の新規事業やアイデア創出のコンサルティングを多く手がける同社は、新しい発想が生まれるような環境を積極的に作っています。同社のデザイン・ディレクターで、自身も1児を育てるママである堤惠理さんは、「業務中に余白をつくることで、クリエーティブな発想以外にも、社員同士に信頼関係が生まれたり、社内で心理的安全性が高まったりするメリットがある」と指摘します。

 「私たちが積極的に余白の時間を設ける狙いは、クリエーティブな発想につなげることだけではなく、より働きやすい職場をつくることにもあります。仕事中に仕事モードではない状態で、社内同士で一緒に何かをすると、信頼関係が生まれると感じているからです。社員同士の関係性が良好だと、心理的安全性が感じられ、安心して自分を表現できる場になっていくんですよね。『ありのままの自分をさらけ出していいんだ』と、失敗するところも含めて恥ずかしがらずに自分を表現する雰囲気がつくられるのは、円滑に仕事を進める上でも大事だと痛感しています」(堤さん)

 同時に、「ただ単に余白をつくればいいというわけではない」と同じく1児を育てるママである、同社のデザイン・ディレクターのアメリア・ジュールさんは言います。余白の効果をより「高める」ためには大事なポイントがあるようです。

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