あなたは、子どもに「今日は学校に行きたくない」と言われたら、どう反応しますか。 無理に学校に行かせる?「どうしてそんなことを言いだすの?」と問い詰める? 内心、1日くらいなら休ませてもいいかなと思いつつ、休みグセがつかないか心配…という人もいるでしょう。子どもは、いつ、どんなきっかけで「学校に行きたくない」と言い出すか分かりません。子どもが行き渋りを見せたとき、親はどう対応をすればいいのでしょうか。行き渋りや不登校はそもそも悪いことなのか、何が問題なのか。今悩んでいる親も、そうでない親も知っておきたい「不登校の今」について取り上げます。学校に行かないわが子を見守った親たちのケースも紹介します。

行き渋りの背景に、遊びの活動から教科学習への急激な変化

 子どもが小学校に入学した途端、登校を渋ったり、休みがちになってしまったりということは少なくありません。保育所・幼稚園から、小学校の生活へとうまくつなげられない子どもが一定数いて、そうした不適応状態のことを「小1プロブレム」と呼びます

 具体的には、小学校に入学したばかりの1年生が新しい環境になじめず、登校を嫌がったり休みがちになったりする、集団行動がうまくできない、授業中に離席をしたり静かに受けられない状態が継続する、勉強についていけない、友達とのトラブルが絶えないなどの「問題(プロブレム)」を指します。最初は、まとまっていたクラスが次第に荒れてくる「学級崩壊」とは異なり、「小1プロブレム」は個人的な問題で、入学当初からそうした状況が始まるという特徴があります。東京都が平成24年に発表した調査結果では1年生に不適応状況があった割合は約10%。つまり、都内には1年生のクラスの1割に「小1プロブレム」を抱えている子がいるということで、現在はさらに増えていると見られます。

 全国で年間約8万人の幼児・児童・生徒のスクリーニングを行っている山形大学教職大学院教授の三浦光哉さんは、「小1プロブレムを引き起こす要因は複合的ですが、最も大きいのは、園と小学校におけるカリキュラムの違いです」と指摘します。

 「保育所・幼稚園は遊びの活動を通して幼児の成長・発達を促すことを目的としたカリキュラムですが、小学校は教科学習が主になります。それまで伸び伸びと遊んできた子どもが、急に着席行動を強いられ、勉強をしなくてはならない。子どもにとっては大きな戸惑いです

 これまでは特に保育所・幼稚園で時間に縛られての着席行動を求められなかった子どもたちが、小学校に入って突然、学校の先生の言う通りに規律正しく行動することを求められるようになる。そうした環境やカリキュラムの変化に慣れないことが、行き渋りなどの大きな原因になると言います。子どもがマイペースな性格だからという理由で、長所を伸ばすためにもあえて自由度の高い保育所や幼稚園を選んでいたような家庭の場合、小学校に入学してからの環境変化に、親子ともに大きく戸惑うこともあるかもしれません。

 また、三浦さんは「小1プロブレムが起き、入学早々に行き渋りになりやすい子の特徴としては、例えば、過去に保育所・幼稚園で行き渋りをしていたことがある、過去に母子分離不安があった、といったことが挙げられます。一方、これまでにそうした状況がなくても、朝の着替えや朝食にかかる時間が長くなった、お腹が痛いということが増えた、登園した際に元気にあいさつをしていた子どもがあいさつをしなくなったり声が小さくなった、といった変化は、行き渋りが起こるサインと考えています」と話します。

 では、そうした就学後の行き渋りを防ぐために、未就学児の親ができることは何でしょうか。

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●小学校からの45分授業に慣れるために親ができることは
●学習の遅れが行き渋りの一因にも。ただし親が勉強を強制するのはNG
●遊びながら勉強を先取りする方法