AIの発達や社会情勢の変化で、将来の先行きが不透明です。そうしたなかでプログラミングやSTEAMなど、親世代にはなかった理系教育のキーワードが注目され、子どもに理系教科に強くなってほしい願う親は少なくないでしょう。

そもそも算数や理科などの理系教科が強くなることで、どんなメリットがあるのでしょう。また、文系両親のもとで理系脳の子どもを育てることはできるでしょうか。未就学児のうちはもちろん、小学校高学年からでも間に合う、子どもの理系思考を育むための家庭の習慣や、親子で楽しめる理科遊び、理科実験を紹介します。

 2020年から小学校でプログラミング教育が必修化されました。プログラミングと聞くと、私たち親世代のなかには、プログラマーと呼ばれる一部の人にしか理解できない難解な技術というイメージを持っている人もいるかもしれません。プログラミングって何? どうやって学ぶの?なぜ必要なの? と疑問を持つ親もいるでしょう。ワークショップを通じて、多くの子どもたちにプログラミングを教えてきたNPO法⼈CANVAS理事⻑の石戸奈々子さんに話を聞きました。

 「コンピューターを動かすための命令が『プログラム』で、そのプログラムを書くことを『プログラミング』と言います。その命令は、コンピューターが理解できる言葉で伝えなければいけません。それが『プログラミング言語』です」。文系の人でも、C/C++やパイソン、JavaScriptなどのプログラミング言語の名前を目にしたことはあるのではないでしょうか。

 石戸さんは言います。「プログラミングは表現したいことを生み出す手段です。ルールにのっとり順序立てて、効率よく組み立てることが求められます。プログラムを組み立ててものづくりをする中で、論理的、創造的に思考する力が育まれます。プログラミングというものづくりを通じて、子どもたちは自らの知識を構築していきます。組み立て、実行し、修正するという思考の試行錯誤を可能とするからです」

 プログラミングが必修と聞くと、新しく教科ができるの? と思う人もいるかもしれません。「プログラミングという新しい教科ができるわけではなく、各教科の中にプログラミングが入っていきます。教科科目の学習と組み合わせることで、各教科科目の理解を深め、さらに探究したいという心を育むと共に、学んできた知識を総合し、活用する応用力、総合力を身に付けることができるのです」

 では、実際に子どもはプログラミングでどのようなものを作ることができるのでしょうか。下に紹介する写真は「第4回全国小中学生プログラミング大会(JJPC)」で準グランプリ、優秀賞を取った小学3年生、小学2年生が作ったプログラミングの作品です。

小学3年生が作った「会話おたすけ音声ロボット」。ケガや病気で話したり書いたりすることが難しい人に便利な会話支援ツール。レゴでつくったグローブを手にはめ、パソコン画面のひらがな表をクリックするとその文字を読み上げてくれる(写真提供/石戸奈々子さん)
小学3年生が作った「会話おたすけ音声ロボット」。ケガや病気で話したり書いたりすることが難しい人に便利な会話支援ツール。レゴでつくったグローブを手にはめ、パソコン画面のひらがな表をクリックするとその文字を読み上げてくれる(写真提供/石戸奈々子さん)
小学3年生が作った「会話おたすけ音声ロボット」。ケガや病気で話したり書いたりすることが難しい人に便利な会話支援ツール。レゴでつくったグローブを手にはめ、パソコン画面のひらがな表をクリックするとその文字を読み上げてくれる(写真提供/石戸奈々子さん)
小学2年生が作った、温度感知装置「まほうのぼうしと黒猫アキラとピカつむり」。『魔法の帽子』が、屋外の気温、湿度、天気を検知し、帽子がピカつむりに外の様子を伝えると、ピカつむりは、光と音で反応する
小学2年生が作った、温度感知装置「まほうのぼうしと黒猫アキラとピカつむり」。『魔法の帽子』が、屋外の気温、湿度、天気を検知し、帽子がピカつむりに外の様子を伝えると、ピカつむりは、光と音で反応する

 こうした作品を見て、「うちの子には難しいかな」と思ったでしょうか。しかし、石戸さんは言います。

 「大事なのは『子どもが何を表現したいか』なのです。プログラミングはあくまでツールにすぎません。自分の好奇心を広げ、好きなことを深めてくれるツールです。プログラミングを学ぶ中で、『これもできる』『あれもできる』という様々な可能性に出合い、表現力、想像力が開花していく可能性があるのです」

 次のページからは、親に知識がない場合は子どもとどのように挑戦すればいいか、どんなプログラミングツールを選べばいいかや、幼少期からICTのリテラシー能力を高める大切さについて紹介します。