AIの発達や社会情勢の変化で、将来の先行きが不透明です。そうしたなかでプログラミングやSTEAMなど、親世代にはなかった理系教育のキーワードが注目され、子どもに理系教科に強くなってほしい願う親は少なくないでしょう。

そもそも算数や理科などの理系教科が強くなることで、どんなメリットがあるのでしょう。また、文系両親のもとで理系脳の子どもを育てることはできるでしょうか。未就学児のうちはもちろん、小学校高学年からでも間に合う、子どもの理系思考を育むための家庭の習慣や、親子で楽しめる理科遊び、理科実験を紹介します。

 中学受験で、国語や算数に注力するあまり、理科がおろそかになってしまったり、苦手意識があって点数が伸びなかったりする子もいるかもしれません。

 子どもを理科好きにする意義や理科を得意科目にするコツを、東京大学サイエンスコミュニケーションサークルCASTの越田勇気さん(理学部3年生)に聞きました。記事の後半では手軽にできる、浮力や光の屈折などの理科実験6つを紹介しています。中学受験の勉強や夏休みの課題の参考にしてみてください。

知っていれば人生が楽しくなる

 そもそも、なぜ理科は大切なのでしょうか。越田さんは「理科に親しむ意義は3つあります」と言います。

 1つ目は、科学リテラシーを得られるということ。世の中には科学的な根拠が不十分な商品があります。与えられた情報の真偽を見極め、正しい判断をするには、基礎的な理系の知識が不可欠です。中学受験で結果を出すためだけでなく「怪しげな情報に惑わされることなくこれからの時代を生き抜いていくために、小学生のうちから理科に親しんでおくといいと思います」

 2つ目は、論理的思考の基礎が身に付くこと。「実験では手順に従って手を動かしながら、得られた結果の理由や背景を考えて言葉にしなくてはなりません。実験は、物事を論理的に考え、聞き手に分かるように説明する力を身に付けるのに最適です」

 3つ目は、人生を楽しむ鍵になるということ。「例えば、河原で遊ぶとき、転がっている石についての知識があれば、ただの石が名前のある石になるわけです。知っていれば人生がもっと楽しくなる。それが理科だと思います。子どもの頃にやっていたサッカーが大人になってから趣味になるように、理科も生涯を通じて楽しめる趣味になるといいですね」

 越田さんが理科に興味を持ったのは理系出身の両親の教育が大きかったと言います。「両親は僕が興味を持った分野に合わせて、色々な場所に連れて行ってくれました。お台場の理数系体験施設『リスーピア』には、毎月1~2回は行きました。親も同じように体験して楽しんでいたので、施設に行くのはとても楽しみでした」。自宅での理系科目の学習の際には「勉強はいつも両親に質問していました。親は興味を持って向き合ってくれました。おかげで、僕の理系科目への関心はどんどん高まっていきました」

 ただ、すべての親が子どもの質問に答えられるわけではありません。「親が子どもと一緒に興味を持って取り組む姿は、子どものモチベーションにもつながります。理科の実験は最高ツールだと思います」と話します。次ページからは、小学生のいる家庭に向けて中学受験勉強や夏休みの課題に使える実践的な理科実験を紹介していきます。