AIの発達や社会情勢の変化で、将来の先行きが不透明です。そうしたなかでプログラミングやSTEAMなど、親世代にはなかった理系教育のキーワードが注目され、子どもに理系教科に強くなってほしい願う親は少なくないでしょう。

そもそも算数や理科などの理系教科が強くなることで、どんなメリットがあるのでしょう。また、文系両親のもとで理系脳の子どもを育てることはできるでしょうか。未就学児のうちはもちろん、小学校高学年からでも間に合う、子どもの理系思考を育むための家庭の習慣や、親子で楽しめる理科遊び、理科実験を紹介します。

 特集1本目で紹介した読者アンケートの結果によると、回答者のほぼ全員が、子どもに「算数を含む『理系の勉強』を好きになってほしい」と願い、日常生活の中でさまざまな工夫をしていることが分かりました。では、教育のプロは「理系教育の重要性」をどう考えているのでしょうか。

 花まる学習会代表の高濱正伸さんは、これからの時代に「理系思考」が必要な理由について、「算数や理科などの科目を得意になれば、社会に出たときに役に立たないことはない」と断言します。

 「論理的な思考力はあらゆる職種で必要です。最近では大量の情報を分析するデータサイエンティストという仕事が脚光を浴びていますが、これはまさしく理系思考が必要な職種。あらゆる産業でAI(人工知能)分野の成長が著しく、将来子どもがAIを使ったプロジェクトに関わる可能性もあるでしょう。直接、理系の仕事に就くことがなくても、矛盾のない考え方ができる人、余計な物事に翻弄されずに本質を語れる人は、どんな職種においても重宝されると思います」

 理系教育のメリットは就職などの仕事面だけにとどまりません。高濱さんは「最後まで物事をやり切る力、考え抜く力など、これから生きていく上での基礎となる力が身につく」と話します。

 「数学の長い方程式を最後まで粘り強く解く努力は、最後まで自分が決めたことをやり抜く力に直結します。算数の問いに対して、自分で考え、だめなら別の角度からアプローチしてみる……という試行錯誤の過程には、粘り強く考える力のエッセンスが詰まっています。また、化学の実験や物理の学習は、身の回りの現象への関心を高め、子どもに考えることを習慣づけることができます」

 では、親が家庭で子どもの理系思考を伸ばしたいと思ったら、どのようなアプローチをすればよいのでしょうか。今回は、子ども向け理科実験教室を営むアインシュタインラボ代表の北原淳さん、東京大学教授で「渋滞学」を考案した西成活裕さんにも話を聞きました。すると、3人が口をそろえて強調した「大切な習慣」があったのです。

 記事の後半では、未就学児から家庭でできる具体的な習慣を、高濱さんに紹介してもらいました(小学生向けの習慣は特集3回目で紹介します)。早速見ていきましょう。