日々「時間との戦い」で、常に「焦って」いるような気がしてしまう……。そう感じている働くママ・パパは多いはず。焦りには、「仕事が終わらない」「子どもを寝かせなきゃ」といった毎日の仕事や育児家事が原因となるものもあれば、自分のキャリアや子どもの教育などへの不安からくる長期的なものもあります。焦っても仕方がないと頭では分かっていてもつい焦ってしまう。両立生活につきまとう「焦り」の正体と、その解決法について、専門家などに取材しました。明日から焦らない毎日を送るためのヒントが満載です。

子育てに焦る背景には平均へのこだわり。子をよく見ることが大切

 受験戦争や就職氷河期を経てきた親世代。習い事やスポーツをほかの人より早く始めたり、親のアドバイスに従って努力したりすることで、よい結果が得られたという体験がある人もいるでしょう。親となった今、その成功体験を子どもにも当てはめようとしていないでしょうか。また、よその家と自分の子育てを比べて、「あれができていない」「これが遅れている」と焦っていませんか?

 でも、その焦りは子どもの成長にとって本当に必要なのでしょうか。京都大学総合博物館 准教授で子育てや教育の問題にも詳しい塩瀬隆之さんに、子育てへの焦りがどこから来るのか、子どもにとって本当に必要な働きかけは何かなどを聞きました。

 塩瀬さんは親が子育てで焦ってしまう要因として「平均」にとらわれていることを挙げます。わが子の数字と平均を比較して、上か下か、遅いか早いかを気にしてしまう人は多いでしょう。学校や塾に行き始めるとテストの平均点が発表されるので、なおさらです。

 平均値という数字ではなくても、ピアノやスイミング、公文などの「平均的な習い事」を「みんながやるから早く始めさせなければ」と今まさに焦っている人もいるのではないでしょうか。

 「平均より上でなければ、早くなければ」「平均はクリアしなければ」という焦りから逃れるには、どうしたらよいのでしょうか。

 塩瀬さんは、「平均」の意味を正しく知ること、「物差し」をたくさん持つことで平均の呪縛から逃れられると話します。

 「自分の子育てを人と比べて焦る状態から脱するには、親がわが子をしっかり見るようになることが必要です」と塩瀬さん。さらに、わが子の可能性を広げたい、親を越えてほしいと願うなら、「手を出さず、口を出さず、目を離さない」姿勢が大事だと指摘します。

 簡単なように見えて意外と難しいのが「待つ」です。「良かれ」と思ってつい口や手を出してしまいます。塩瀬さんはちょっとした心がけや行動を取り入れると、子どもを待てるようになると話します。その「子どもを待つ7つの作法」を記事後半で教えてもらいます。

次のページから読める内容

子育てへの焦りを生む平均の呪縛から脱するには?
・平均と比べることは意味がないと意識する
・子ども自身をしっかり見る
・「物差し」をたくさん持つ ほか

子ども自身を見るときのポイントは?
・口や手は出さない
・客観的に見る ほか

「子どもを待つ7つの作法」
・口を出したくなったら深呼吸をする
・子どもの目線になって見る ほか