結婚した当初は、夫婦が同じように働き、同じように稼ぎ、夫婦は平等だと思っていた。だけど、子どもが生まれて共働き子育て生活が始まると、一方だけが育児や家事の大半を担うワンオペに。それどころか、家庭内の発言権、決定権にまでいつの間にか差がつき、気づくと夫婦間に大きな不平等や格差が生まれていた、というケースは少なくありません。いったい、こうした共働き夫婦の不平等はどこから生まれるのでしょうか。背景や、解消のヒントを探りました。

夫婦にはそれぞれの、「平等」の落とし所がある

 夫婦間の家事や育児の分担が極端にどちらかに偏る不平等をなくすために、ベビーシッターなどの外部サービスを利用するのは一つの解決手段でしょう。しかし、その金額が「月20万円」にも上ると聞いたら?

 それを実践してきたのが、2歳の子どもと夫と都内で暮らす、フリーランスライターの秋カヲリさん。出産の1カ月後からは、月20万円ものシッター代を払って、がむしゃらに働いてきたといいます。

 「私は、いわゆる大黒柱ではありません。出産前に1000万円超えだった年収は、妊娠・出産で大幅にダウン。さらに私は、家事の嫌いな、いわゆるガサツ妻ですから、家事全般を担っているのは会社員である夫。仕事から帰ってくると淡々と家事を始める夫に対し、原稿に追われていれば、私はPCに向かったまま動かないこともあります」

 そんな秋さんは、「子どもを産んだら、しばらくは美容室に行ったり洋服などの買い物を楽しんだりできなくなるだろう」などとは考えませんでした。仕事をすることにプラスして、子どもをベビーシッターに任せている間に美容院に行ったり、買い物に行ったりと、ちょくちょく自分の楽しみを実現させてきたといい、「だからこそ、私たち夫婦はうまくいっている」と語ります。

 今回は、秋さん夫婦の事例を通して、「夫婦の平等とは何か?」を探ります。「夫婦の平等の落とし所」は、100組夫婦がいれば100通り。皆さんの落とし所を見つける一つの参考として、ぜひ、最後までお読みください。


安定収入をもたらす夫が、家事全般も担当

 夫は「帰宅して部屋を一巡すれば、君がどこを歩き何を使ったかが分かる」と言う。2歳児の母でありフリーランスライターである私は、1日中家にいるが、家事ができない。やる気も出なければ適性もない。書類を片付けるつもりで机の前に立ったのに、気づけば未対応の書類を探している……なんてことは日常茶飯事だ。

 一方、夫は帰宅後すぐに家全体を目視し、キッチンの洗い物を片付け、水回りを磨き上げる。子どもの洗濯物を洗濯機に放り込み、明日の保育園の準備をして、おもちゃを片付け、ようやく風呂に入って一息つく。私はというと、原稿に追われているとパソコンに向き合ったまま、漬物石のように動かない。息子の食事や寝かしつけは私がやるが、夫が早く帰ってきた日は息子をお風呂に入れてもらう。

 家事を放免されるくらい稼いでいるのかといえばNOだ。私の収入はライフステージに合わせてジェットコースターのように乱高下しており、結婚前は夫の半分、結婚当初は夫と同等、出産前は夫以上、出産から現在に至るまでは夫以下。1000万円にもなった年収は、妊娠・出産のタイミングで約半分にまで下がってしまった。

 それでも私たちはうまくいっている。嘘みたいな話だが、ガサツなフリーランスときちょうめんな会社員、性格から働き方まですべてが対照的なのに、口論もなく仲良く暮らしている。夫に「こんなに片付けできない妻でイライラしないの?」と聞いたら「得意なほうがやればいいんだよ。カヲリちゃんが得意なのは掃除じゃないでしょ」とあっさり答えた。

 とはいえ、最初から愛の力でダメっぷりを受け入れられていたわけではない。同居初期は、夫が片付けても片付けても家が汚くなることにストレスを感じ、帯状疱疹(ほうしん)まで発症していた。

 それでも良好なパートナーシップを築けたのは、私たちにとって「育児や家事を平等に分担すること」が夫婦円満の条件ではなかったからだろう。欠陥過多である私も、お互いが望むものを踏まえ、夫婦を続けるための努力をしてきたのだ。