結婚した当初は、夫婦が同じように働き、同じように稼ぎ、夫婦は平等だと思っていた。だけど、子どもが生まれて共働き子育て生活が始まると、一方だけが育児や家事の大半を担うワンオペに。それどころか、家庭内の発言権、決定権にまでいつの間にか差がつき、気づくと夫婦間に大きな不平等や格差が生まれていた、というケースは少なくありません。いったい、こうした共働き夫婦の不平等はどこから生まれるのでしょうか。背景や、解消のヒントを探りました。

夫婦間格差は、どこから始まり、どう解決できるのか?

 夫婦間格差は、どこから始まり、どうすれば解消できるのでしょう? 今回は、産休・育休などによる環境変化によって生じた夫婦間の不平等を解消した、組織マネジメントのコンサルティング会社「識学」で経理業務に当たる吉永亜寿紗さんのルポを紹介します。

 エンジンオイルの卸売会社、税理士事務所で経理業務などを行っていた吉永さん。転職活動中に出産すると、その後は「家事や育児は、働いていない自分がやるもの」と考え、ワンオペ育児になっていたそうです。その状況は、識学に経理担当として採用され、フルタイム勤務になってからも変わりませんでした。

 自分の時間はほぼゼロ。当時は、「どのタイミングで、育児や家事を夫にバトンタッチすればいいのか、そのきっかけが分からなかった」と話します。

 紆余曲折(うよきょくせつ)を経て、今、吉永さんは「やっと家族が一つのチームになれている気がする」と笑顔を見せます。そんな吉永さん夫婦の、不平等を解消するまでの軌跡は、どのようなものだったのでしょう? 詳しく話を聞きました。

吉永亜寿紗さん
組織マネジメントのコンサルティング会社である識学で経理業務を担当。エンジニアの管理業務を行う夫と3歳の娘と、都内で3人暮らし。2度の転職を経て現職。

何もせずに、相手が変わるなんてあり得ない

 今思えば、どうして倒れる寸前まで、一人で何でもやろうとしていたのか不思議に思います。おそらく、自分が無職だったり短時間勤務だったりしたことで、フルタイムで働く夫に引け目があったのでしょう。

 また、娘が「プロ赤ちゃん」と言われるくらい、手の掛からない子だったのも大きかったです。夜はよく眠るし、当時はまだ、夫が日中に娘を連れて散歩に行っていたこともあって、正直、他のママたちから「まとまった睡眠がとれない」「育児が大変」と言われても、理解できなかったんですね。

 ですが、娘が2歳になると状況は一変。再就職してフルタイムで働き始めたタイミングで、娘の「パパいや! ママがいい」が激しくなったのです。その姿を見てすごく後悔しましたね。それまで、自分が何もかもやり過ぎてしまったから、夫に懐かなくなってしまったのではないかと責任を感じました。

 それからは、夫も娘と距離を置くようになり、そのしわ寄せがまともに私に降り掛かってきました。休日には、昼寝もせずに夜まで元気な娘の相手をして、夜になったらひどい夜泣きをなだめる。それでも当時は、子どもの夜泣きは一時的なものだし、きっとすぐにまた自分の時間を持てるようになるはず、夫もいずれ、育児に協力できるようになるだろう、と楽観的に考えていました。

 まったくもって、甘かったですね。

【吉永さん夫婦の場合】

「夫婦間格差の始まり」
・自分は時短、夫はフルタイムだから、「育児や家事をやるのは当たり前」という考え

「どうやってワンオペを解消したのか?」
・「もう無理、できない」とはっきり伝え、具体的にどうするかを伝えた