コロナショックによる経済混乱の中、家計も引き締めムードになっているのではないでしょうか。今後の先行きが不透明で、「教育費も見直していくべきかもしれない」と考えている方は多いかもしれません。とはいえ、子どもの可能性は狭めたくなく、教育のクオリティーは上げていきたいところです。「ローコスト」と「ハイクオリティー」を両立させるための方法や勘所を探っていきます。

 本特集の1本目記事「教育費、子どもにも共有すれば主体性身に付く」で、教育費に詳しいファイナンシャルプランナーの竹下さくらさんの「教育費にも予算を決め、それを守る意識が必要」というアドバイスを紹介しました。また、4本目記事「塾に行かずに中学受験 自宅習慣と学習スケジュール」では、通常のスタイルで通塾せず、自宅学習を中心にして中学受験に挑むための方法や受験のプロによるアドバイスをお伝えしています。

 本記事で紹介するのは、実際に教育費に予算を設け、長男の中学受験で自宅学習をメインにするなどして教育費をシビアにコントロールしつつ、子どもの良さが生きる進路選びをサポートしている、日経DUALの読者の実例です。

自分は偏差値70超えの超難関私立中高を卒業。でも…

 私立中学2年生の男の子と地元の公立小学校に通う小学6年生の女の子を育てる共働きママの菅野奈々さん(仮名、40代)は、昔は少数派だった中学受験組で、偏差値70を超える超難関校といわれる東京の私立中高一貫の女子校の出身です。ところが「母の言うなりになって勉強して難関を突破したものの、中学校に入学するとすぐに授業についていけなくなり、自己肯定感が大きく下がった」と言います。

 「周りが非常に優秀で、モチベーションも高い生徒ばかりの中、自分らしさを保つために、ものすごく苦労しました。満足していたのは母だけです。40歳を過ぎた今でも、母の言うなりの進路を歩み、本当にやりたいことがやれなかった過去を悔やんでおり、自分の子どもには決して親の希望や期待を押し付けまい、進路は自分自身で決めさせたい、と強く心に決めてきました」

 しかし、当時小学3年生だった長男を観察していて、「この子はもしかして、中学受験をして私立中に行くほうがいいかもしれない」と思うようになりました。

 「長男は、先生の話に納得ができないと理路整然と反論します。学校の先生に評価され、高い内申点を取れるタイプではありません。公立中に進んで高校受験をする場合、内申点によって受けられる高校の選択肢が狭まると聞き、高校受験しない進路を考えるようになりました」

 私立の中高一貫校を受験する場合、小3の2月から3年間、受験塾に通うのが一般的ともされますが、菅野さんは、このルートに乗ることに抵抗を感じました。

 「難関校を目指したかったわけではないので、偏差値に重きを置く受験塾の指導のあり方はわが家には合わず、息子の個性を潰すことにもなってしまうのではないかと危惧しました」

 社会人になってから一貫して経理畑を歩み、企業の財務・会計業務に精通する菅野さんにとって、塾代の高さも気になるポイントでした。「無理に偏差値を上げようと思っていない以上、そこに余計なコストをかける必要もないのでは」。こんな考えの下、菅野さんは、小3の2月という通塾スタートのタイミングを、いったん見送りました。「通信教育の進研ゼミを始め、それで様子を見ることにしました」