コロナショックによる経済混乱の中、家計も引き締めムードになっているのではないでしょうか。今後の先行きが不透明で、「教育費も見直していくべきかもしれない」と考えている方は多いかもしれません。とはいえ、子どもの可能性は狭めたくなく、教育のクオリティーは上げていきたいところです。「ローコスト」と「ハイクオリティー」を両立させるための方法や勘所を探っていきます。

特待生制度を設ける私立校が増加。6年間学費免除の学校も

 今春の約3カ月に及ぶ休校では、公立校と私立校の対応の差が目立ちました。私立校が続々とオンライン授業を始めたのに対して、公立校の対応は遅く、双方向オンライン指導は5%にとどまりました(文部科学省調べ)。教育格差への不安から「これまでは中学までは公立でよいと考えていたけれど、私立も検討してみようか」と考えている家庭もあるのではないでしょうか。

 私立中への進学の壁になるのが学費です。保護者が1年間に支出した・子ども一人当たりの学校教育費は私立中の場合は約107万円で、公立中学の約14万円と大きな差があります(平成30年度 文部科学省「子供の学習費調査」)。

 コロナが家計に与えるダメージが避けられない場合は、私立へ進学させるのは経済的に厳しいと思うかもしれません。そこで知っておきたいのが、「特待生制度」を設ける私立中学が近年増えているということです

 首都圏を中心に展開する学習塾「市進学院」執行役員で教育情報センター室長を務める児玉修昌さんは、「首都圏に約300の私立中がありますが、特待生制度を取り入れている学校は増えており、2019年度は160校以上が何らかの形で特待生入試(奨学金制度含む)を行いました」と話します。

 特待生制度とは、合格した生徒に入学金や授業料を免除する特典を与える制度。免除される内容や期間は学校によって異なります。免除内容が異なる複数の制度を設ける学校もあります。

 例えば、東京都墨田区の中堅校である、私立安田学園中学校・高等学校(以下安田学園)は2013年度から特待生制度を実施しています。東京大学など最難関大学を目指す「先進特待入試(先進コース)」の上位合格者は入学金が半額になり、成績に応じて、授業料が1~6年間免除されるのだそう。同校校長の稲村隆雄さんによると、同コースの定員120人のうち、毎年1割程度が特待生として選ばれるそうです。

 特待生制度がある学校は、首都圏で見ると千葉県の渋谷教育学園幕張や都内の渋谷教育学園渋谷などの上位校、中位校の郁文館、宝仙学園、淑徳巣鴨、女子美術大学付属、富士見、足立学園(いずれも東京都)など。

 埼玉県や千葉県の進学校では、栄東中学や開智中学、大宮開成が一般入試とは別に、合格者全員が特待生となる特待生選抜入試を行っており、募集人数も多めです。「ただし偏差値は栄東は68(東大特待Ⅰ・市進学院HPより、6月1日更新、以下同)、開智は67(先端特待入試・同)と難関で、東京の御三家を狙う子どもの併願校となっています。大宮開成も志願者が年々増えていて、2020年の特待入試では約12倍の倍率となりました」(安田教育研究所の安田 理さん)

 特待生制度が増えている背景にはどのようなことがあるのでしょうか。特待生に選ばれるのはどんな子で、志望校を選ぶ際に気を付けたい点は?など、私立中の特待生制度について、次ページから詳しく聞いていきます。