独自の指標で「共働き子育てしやすい企業ランキング2020」を発表。上位企業とその施策を紹介します。特集の後半では、急速に働き方の多様化が進まざるを得なくなってきたなかで、私たちが「共働き子育て」をする意義とは何か、企業はどう対応していくのかなど、これからの働き方を考えていきます。
新型コロナウイルスにより私たちの職場や働き方はどのように変わっていくのでしょうか。「日経DUAL共働き子育てしやすい企業2020」の審査員であり、東レ経営研究所ダイバーシティ&ワークライフバランス推進部チーフコンサルタントの塚越学さんが、これから起こりうる働き方の変化について語ります。

 新型コロナウイルス感染拡大防止のための緊急事態宣言、その延長、解除後の「新しい生活様式」が厚生労働省によって示され、いよいよ新型コロナと共存していく世界に突入します。

 これまでとこれからで何か変わるのでしょうか。共働き子育て社員にとって、その職場において、今後何が求められるのでしょうか。私なりに考えてみます。

対面を前提とするチームワークが崩れた

 今回、私たちは、飛沫や接触で感染拡大する新型コロナウイルスに対して、人と人の接触を断たなければ、この闘いに敗北してしまうリスクにさらされました。つまり、対面がリスクになったのです。これは人類にとって恐ろしい事態だと私は思いました。

 なぜなら、人類がここまで発展できたのは、一人の超人がいたからではなく、人と人が直接会って対面で信頼を深め、チームとして何かを成し遂げることを得意としてきたからです。対面によるチームワークを得意としてきた私たちは、対面を前提として職場に人が集まり、職場に経営資源を集中してきました。対面さえできていれば、職場では一覧性の高い紙を使えばよく、他のテクノロジーを頻繁に使う必要性はそれほど感じません。

 さらに、距離の近さに関するいくつかの研究によると、距離の近さは、より高い好感度とより良いコミュニケーションに関係しています。人間は、近くで働いている場合は、他者とより協力するようになります。他者から距離が遠くなるほど、コミュニケーションは限定的なものとなり、協力も少なくなることがわかっています。

 つまり、私たちは、対面で一緒にいるというだけで、目には見えない恩恵をたくさん受けていたということです。人間が対面を重視してきた理由の1つとも言えます。

 今回は、その対面という基盤が足元から大きく崩れ落ちたため、対面であることを当たり前としていたチームや企業ほど、今回の急な働き方変更に苦戦しているように見えます。私は、このコロナ禍でダイバーシティの先進企業とやりとりをしていましたが、平時では取り組みに大きな差が見られなかった先進企業も、この緊急時に見えてきた「差」がいくつかありました。

対面によるチームワークがコロナ禍では難しくなった(写真はイメージです)
対面によるチームワークがコロナ禍では難しくなった(写真はイメージです)