独自の指標で「共働き子育てしやすい企業ランキング2020」を発表。上位企業とその施策を紹介します。特集の後半では、急速に働き方の多様化が進まざるを得なくなってきたなかで、私たちが「共働き子育て」をする意義とは何か、企業はどう対応していくのかなど、これからの働き方を考えていきます。

 新型コロナウイルスの感染拡大を機に、多くの企業で「働き方改革」が進みました。共働き子育てを取り巻く環境はどう変化するのでしょうか。「共働き子育てしやすい企業ランキング2020」でアドバイザーを務めた、中央大学大学院戦略経営研究科教授の佐藤博樹さん、育休後コンサルタントの山口理栄さんの話を基に、コロナ禍で明らかになった職場の課題と、その課題を解決する努力によってもたらされる柔軟な働き方の可能性などについて紹介します。

新型コロナがテレワークの課題を浮き彫りにした

 テレワークが広がっているような印象があるものの、厚生労働省とLINEが4月12日~13日に実施した第3回「新型コロナ対策のための全国調査」ではテレワーク導入率は全国平均で27%にとどまっていることが分かりました。

 育休後コンサルタントの山口理栄さんは、「新型コロナ対策を機に多くの企業でテレワーク導入が進みましたが、すべてにおいて質の高いテレワークが実現できているわけではないようです」と指摘します。「サーバーやネットワークに過大な負荷がかかるため、カメラは使わずに音声のみで通話をしているケースも。一部の社員だけを対象にしていたはずのテレワークが、一斉に全社員に使われるようになったことで、社内インフラや運用ルールが追いつかないのです」

 多くの企業が今回の新型コロナ対策で働き方改革を迫られました。コロナ禍で見えてきた4つの課題を紹介します。緊急事態宣言は解除されましたが、すぐに以前のような働き方に戻るわけではなく、しばらくは新型コロナと共存しながら、引き続きの課題となるでしょう。

コロナ禍で見えた 企業の4つの課題

課題1●オンライン対応でのマネジメント

 テレワークゆえのマネジメントの難しさに悩む企業が多かったようです。「今回はテレワークへの切り替えがあまりにも急だったため、オンライン上での勤怠管理のルールが明確に示されないまま、個々のマネジャーの判断に委ねられているケースも少なくないようです」(山口さん)。テレワークでは時間にとらわれずに働くことが可能ですが、「企業側に『社員を守る』という視点が欠落すると、社員が不当な長時間労働を強いられるおそれがあります」と山口さんは指摘します。

 「早朝や夜間の勤務については、育児や介護などの事情がある人に限り、マネジャーが個々の事情を把握した上で許可するケースはあってもよいと思います。でも、『在宅なら深夜まで働けるから明日までにこれを仕上げろ』というのはNGです。働き方の柔軟性を維持しつつも、心身の健康を損なうような働き方はさせない。そこはマネジャーの腕の見せどころだったといえるでしょう」