独自の指標で「共働き子育てしやすい企業ランキング2020」を発表。上位企業とその施策を紹介します。特集の後半では、急速に働き方の多様化が進まざるを得なくなってきたなかで、私たちが「共働き子育て」をする意義とは何か、企業はどう対応していくのかなど、これからの働き方を考えていきます。

「共働き子育てしやすい企業ランキング2020」2位にランクインした千葉銀行。女性活躍に力を入れると同時に業務効率化を進め、2018年度から男性育休100%を達成しています。働く場所や時間を柔軟に選べる制度の導入を進め、誰もが働きやすい仕組みを作り上げてきたプロセスとは?現在のコロナ禍での働き方も紹介します。

<千葉銀行>
設立/1943年 本店/千葉県千葉市
千葉県内の貸出金シェアは約40%、預金シェアは約25%で、地域において圧倒的な顧客基盤を誇る。東京・埼玉・茨城・大阪のほか、海外にも店舗をもつ。単独の地方銀行としての資産規模は全国第3位。

「背中を押し続ける施策」で女性の職域を拡大

 千葉銀行は国内銀行で初めて女性を支店長に登用(1986年)するなど、女性のキャリア形成支援に以前から取り組んできました。しかし、女性の管理職への登用数は多くなく、2013年度の「女性管理職」比率は5.5%、「マネジメントを担う女性リーダー職」比率は21.3%にとどまっていました。こうした状況を課題と受け止め、職員の約4割を占める女性の活躍を後押しする取り組みを重要課題に設定。性別に関係なくキャリアをまい進でき、多様な人材がそれぞれの持ち味を生かすことで、環境の変化に柔軟かつスピーディーに対応できる組織を目指す。その第一歩が女性活躍と位置づけたのです。

 女性のキャリア形成支援やネットワーク構築を目的としたセミナーや、女性職員と管理職による意見交換会などを開催してきたほか、2015年度からは管理職手前の女性を対象とした「輝く女性応援ワークショップ」を、1年間のインターバル形式で実施してきました。これらの「女性の背中を押し続ける施策」が奏功し、2019年度には女性管理職比率が15.1%、女性リーダー職比率が30.7%にまで上昇。

 さらに2019年には女性取締役が2人、部長職が執行役員2人を含む6人、支店長クラス(所長、副部長を含む)が25人(2019年7月1日)。女性役員・部長職が増えたことを受け同年からは女性管理職・候補者向けのメンター制度において女性の役員・部長をメンター役に指名。管理職や、より上位の職階に求められる高い視座について学び、女性ならではの悩みや体験談も語り合える機会を提供しています。

 人事制度も見直しました。2018年には採用時のコースによる業務や昇格の制限を撤廃。転居・転勤ありの「総合職」と転居・転勤なしの「エリア総合職」を、ライフプランなどに応じて途中で変更できるようにしたことで、審査や本部企画といった業務にも多くの女性がチャレンジできる環境を整えました。今後は法人営業などへも女性の職域をさらに拡大させていく方針です。

 こうした女性のキャリア推進施策を次々と打ち出せた理由について、ダイバーシティ推進部の新井仁美さんは「経営トップ自らが、『女性活躍推進は当行にとって重要な経営戦略だ』というメッセージを発信し続けているからだと思います。経営トップの明確な意思表示のもと、5年、10年をかけて地道にコツコツと続けてきた成果が表れているのではないでしょうか」と言います。

 女性のキャリアを考えるうえで切り離せないのが、子どもがいる女性が育児をしながら働き続けられる環境づくりです。仕事と育児を両立させるには、男性や上司の意識改革も必要になります。次のページからは、仕事と育児の両立支援や、男性育休率を100%に押し上げた取り組みなどのほか、コロナ禍での新たな働き方などについて紹介します。