女性のキャリアとライフスタイルを応援する女性誌『日経WOMAN』(日経BP)と日本経済新聞社グループを挙げて女性の社会参画を応援する活動である「日経ウーマノミクス・プロジェクト」は2022年版「女性が活躍する会社BEST100」をまとめました。本記事では、その部門賞として、DUAL独自の指標で集計した「共働き子育てしやすい企業ランキング2022」を発表。今年4月から取得推進が義務化された男性育休への取り組み状況や、男女ともに子育てしながら働きやすい施策の有無などに着目し、独自評価しました。

 「共働き子育てしやすい企業2022」のオブザーバーで、東レ経営研究所ダイバーシティ&ワークライフバランス推進部チーフコンサルタントの塚越学さんは、男性の育児休業取得を促進する育児介護休業法の改正に長年関わり続けてきたメンバーの一人です。その塚越さんに、2022年のランキングを振り返りつつ、これから「共働き子育てしやすい企業」はどう変わっていけばいいのか、男性育休の視点から寄稿してもらいました。

2022年のランキング上位32社はこちら

2022年のランキングを振り返って

 改正育児・介護休業法が施行された2022年、エントリーした企業において男性育休関連に変化が生じているかどうかは私の関心事の一つでもありました。エントリーした535社のうち、「男性育休取得率90%以上+取得日数50日以上」をクリアした企業は10社ありました。昨年までは、この2つの数字をクリアした企業はほとんどなく、取得率が高くても取得日数は少ない企業が大多数でした。

 ランキング上位20社で見てみると、昨年の上位20社と比べて男性育休取得率は昨年比約1.5倍(71%→105%)に上昇。取得期間は平均すると47日から40日に下降していますが、10日未満の会社が昨年は上位20社中9社(45%)だったのが、2022年は20社中6社(30%)まで減少しているので、期間の長さは底上げされているといえます

 ちなみに、ここでいう「男性育休取得率」とは、「当該年度中に新たに育児休業が取得可能となった社員数」に対する「新規取得者数」の割合を指すため、取得率が100%を超えることがあります。

 具体的には、1位のゆうちょ銀行(昨年11位)は、取得率59%が90%まで上昇しただけでなく、平均取得期間は昨年同様に1カ月以上をキープしています。5位の住友生命保険(昨年15位)は、取得率104%から121%まで上昇し、取得期間は6日から43日に伸びています。

 全般的に男性の育休は取得率が上昇すると取得期間が短縮する傾向にあります。実際、金融業、保険業は「令和2年度雇用均等基本調査」の産業別取得割合では取得率が31.04%と、平均の取得率12.65%よりも高いですが、そのうち取得日は5日未満が64%。その中においても、ゆうちょ銀行と住友生命保険の2社は、金融業の中でも高い育休取得率に加えて1カ月超の平均取得日数を実現しています。

 産業別では、有給休暇取得率が顕著に低い傾向にある卸売業・小売業の中でランキング2位のイオン(昨年9位)が健闘。男性育休取得率は5%から64%に上昇し、取得期間は69日と長期化も実現しています。また、10位のENEOS(昨年19位)は取得率95%から173%となり、取得日数は20日超をキープしています。

 こうした男性育休の取得率と取得期間の長さが両立している企業は、職場の風土だけでなく働き方改革などの工夫が寄与していると推察されます

 ゆうちょ銀行とENEOSは、男性育休だけでなく、有給休暇取得率は80%を超え、管理職と非管理職の取得率にも大きな差はありません。子育て社員に限定した育休と違い、有給休暇取得率には全社員の職場の様子が反映されます。そして、非管理職の有給休暇取得率が高くても管理職が低い企業は珍しくはありません。なぜなら、働き方改革で非管理職を休ませる一方で、管理職が部下の仕事をかぶってしまって結局は休みを取れないという状況が有給休暇取得率の差として表れるからです。

 管理職と非管理職の有給取得率がどちらも高いというのは、育児だけでなく、比較的誰もが休みやすい職場環境だといえるでしょう。これは共働き子育てしやすい職場環境の大きな要素です。

<次のページからの内容>
●「共働き子育てしやすい企業」に必要な条件は
●今後さらに職場として「進化」をするためには何が必要?
●男性育休取得についての今後の展望