出社勤務がマストなら「なぜ必要なのか」の説明を

 コロナ前と比べるとリモートワークが普及した現在でも、職種・業種によっては出社が必要な仕事は少なからず存在しています。

 「接客業などはどうしても出社が必要ですが、なぜ出社が必要なのか判断基準が見えづらい職種もあります。その点を曖昧にせず、『あなたの仕事はこういう理由で週何日は出社が必要』と上司がしっかり説明し、本人が納得したうえで出社勤務を行うのがあるべき姿だといえます。評価についても、出社勤務か在宅勤務かを観点にするのではなく、仕事の成果に基づいて実施することが重要です」

 在宅勤務が可能な職種にもかかわらず出社が必須となっている企業の場合は、会社のセキュリティ面だったり、精神論が根強い社風だったりするなど、その理由はさまざま。「セキュリティや回線などのリモートワークに必要な環境が整っていない場合は環境整備への投資が必要ですし、『仕事は出社してやるべきだ』といった精神論が管理職の間で根強い場合は会社の風土そのものを変えていく必要があるでしょう。在宅勤務では社員をマネジメントできないというのであれば、管理職がリモートワークのマネジメント手法を学ぶ研修などの機会をつくる。その理由や原因に応じて社員に説明したり、工夫したりする努力が企業には必要となります」と山口さん。

「子どもがいるから在宅勤務をしたい」はNG

 企業の環境整備や意識改革は一朝一夕には進まないため、場合によっては、出社勤務を在宅勤務に切り替えられるように、会社側と個別に交渉したいと思っている共働き社員もいるかもしれません。どのように交渉をすれば、スムーズにいくのでしょうか。

 その際、「子どもがいるので在宅勤務にさせてほしいという言い方をするのはNG」と山口さんは注意を促します。

 「子どもがいる人は在宅勤務ができて、出社している人がそのフォローを頼まれるという構図になると社内での不公平感が生じます。『子どもがいるので』という理由では上長からは承認されにくいことが多いですね。

 交渉の際は、『在宅勤務のほうが効率よく働けて成果を出せます』『通勤がなければ短時間勤務にせずフルタイム勤務に戻れます』といった言い方をするのがいいでしょう。在宅勤務にすることが、会社にとっても本人にとってもwin-winの選択なのだということが伝わるように言葉を選びましょう」

 出社する頻度は、「『仕事の種類』と『働く人の制約(保育園のお迎えによる定時退社など)の度合い』によって決まるのが一般的」と山口さん。完全在宅勤務と完全出社勤務の中間にあたる、「週何日は出社、残りは在宅勤務」といった働き方をしている人も多くいることでしょう。その場合、「出社する日は保育園への送り迎えをパートナーに頼むなどして、仕事に充てる時間を十分に確保できるようにすると、週のうちでもメリハリがついた働き方が可能になり、生産性も高まるでしょう」と山口さんはアドバイスします。