グローバル化、ICTの発達に伴う社会構造の変化、コロナ禍による経済縮小や価値観の変化…。社会全体が大きな変革のときを迎える中で、今、未就学児や小学生を育てている親は、子どもの進路に関して、何を軸にどう考えていけばいいのでしょう。中学受験や高校受験に関して、今知っておくべきことは何でしょうか。専門家への徹底取材を通じて得た最新事情をお伝えします。

ここ30年で変化した中学入試 大人でも面白い問題が続々と

 「中学受験」と聞くとどんなイメージがありますか? 小学校の授業ではおよそ習うことのない受験テクニックの習得が必要だったり、知識を詰め込むことが重要だったり、といった印象を持っている人は少なくないかもしれません。

 首都圏模試センター取締役教育研究所長の北一成さんは「中学入試は、大学入試改革に先駆け、知識重視から思考力を問うものへと大きく方向転換しています。30年以上中学受験に携わってきた私でも驚くような、大人が解いても面白い問題が続々と出題されています」と話します。どうしてそのようなことが起こっているのでしょうか?

 「今、日本の教育界は戦後最大の転換期を迎えています。中学入試も、学力だけではなく社会に出たときに必要な『考える力』を問う入試へと舵(かじ)を切っています。中高一貫校の考え方として、社会の変化に直面したときに『どうしたら社会に貢献できるか?』という視点で考え、行動できる人材の育成があります。例えば、今回の新型コロナウイルス感染拡大による社会の変化もその一つです。そうした教育指針に合致し、高度な思考力を備えた生徒を選抜したいという意図が、入試問題の傾向から見えてきます」

大学入試改革のモデルといわれる、公立中高一貫校のユニークな適性検査

 中学受験において、いち早く思考力型入試を実施したのは公立中高一貫校です。1999年より「適性検査」と呼ばれる試験を実施し、小学校で習得してきたことを総合的に活用する教科横断型の問題が出されています。学校によっても異なりますが、国語以外の算数、理科、社会であっても、一問一答式ではなく長文による出題形式がとられやすい傾向があり、それに対する答えも、思考力、判断力、表現力を駆使した記述式がメインとなっています。

 「こうした中高一貫校に倣い、最近では、国立大学附属中学でも、従来の4教科型を廃止して適性検査型へとシフトする学校が出てきています。一部の私立中学では4教科型にプラスして思考力型入試が導入されており、今後はこうした『思考力型の入試』が主流になっていくのは間違いありません」(北さん)

 中学入試の傾向を知ることは、中学受験をするかどうかといった判断をする上でも、どんな価値観を重視して学校選びをするかでも役立つはず。最新の傾向を知った上で、それぞれの家庭にとっての最適解を探るヒントとして、今回は、実際に出された問題を見ていきましょう。 例えば、ユニークな独自問題が多いことで知られる公立中高一貫の桜修館で、2017年に出されたのは次のような問題です。

【問題】傾いたやじろべえを見て、あなたが考えたことを分かりやすく書きましょう。

実際のテストでは、500字以上600字以内、制限時間45分で解答した (画像はイメージ)
実際のテストでは、500字以上600字以内、制限時間45分で解答した (画像はイメージ)

 初めて見ると、大人でも戸惑ってしまいそうなこの問題。見えてくる出題意図とはどのようなものでしょうか?