グローバル化、ICTの発達に伴う社会構造の変化、コロナ禍による経済縮小や価値観の変化…。社会全体が大きな変革のときを迎える中で、今、未就学児や小学生を育てている親は、子どもの進路に関して、何を軸にどう考えていけばいいのでしょう。中学受験や高校受験に関して、今知っておくべきことは何でしょうか。専門家への徹底取材を通じて得た最新事情をお伝えします。

都立高校にまつわる質問、「それって本当?」

 首都圏では中学受験者数が増加しています。低学年であっても、仲の良い友達が中学受験をすると聞くと「うちもそうなるだろうな」とどこかで思っているかもしれません。

 中学受験は小3の2月から塾に通い、塾代は模試などを含め小6時に年間約100万円かかるともいわれています。親自身が「公立小→公立中→公立高校」というルートを通ってきた場合などでは、「中学も高校も公立で十分。どうして小学生時代に受験勉強をしてまで私立に行くの?」と、腑に落ちないような気持ちになってはいないでしょうか。

 「東京の公立高校=都立高校」の実態については、中学受験をするかどうか決めていない都内の家庭にとって、気になるところでしょう。今回は東京にスポットを当てて見ていきます。

 「都立高校といえば、日比谷、西、国立、八王子東、戸山、青山、立川といった進学指導重点校に分類される7校に注目が集まる傾向があります。他の学校の情報はあまり知られていないかもしれませんが、実は都立高校は多様で、教育内容も進化しています。指定校として重点的に予算が配られ、国立大学や難関私立大学の進学実績も十分な、地方の進学校で公立トップ校にあたる位置づけの高校が、東京には最難関校以外に20校もあるのです。1校1校に歴史があり、独自カラーがある点も地方の公立高校と同様です」

 学習塾を運営するQLEAの教育事業部部長で、保護者向け教育情報サイト「高校受験ナビ」を主宰しているSchool Postの石井知哉さんは、このように話します。

 とはいえ、「都立高校は進学指導重点校以外は難関大学に進学できない」といったイメージがあるかもしれません。「都立高校の受験は中学時代の内申点に左右され、先生受けする子以外は不利」といった声や、「中高一貫校では6年間を通じてじっくり大学受験の準備が進められるのに対して、都立高校は3年間しかないのですぐに受験勉強に突入することになり、結局、高校生活を楽しむことができないのでは?」という声も聞こえてきます。

 新型コロナウイルスによる休校期間中、すぐにオンライン授業などを開始した私立に比べて、公立はICT対応の面で後れを取っていることが明らかになった以上、ICT環境も気になるところ。高校も都立はICT環境の整備が後れているのでしょうか。

 そうした都立高校にまつわる「本当のところ」を、次ページから石井さんと、安田教育研究所の安田理さんの二人の識者にじっくりと解説していただきます。