グローバル化、ICTの発達に伴う社会構造の変化、コロナ禍による経済縮小や価値観の変化…。社会全体が大きな変革のときを迎える中で、今、未就学児や小学生を育てている親は、子どもの進路に関して、何を軸にどう考えていけばいいのでしょう。中学受験や高校受験に関して、今知っておくべきことは何でしょうか。専門家への徹底取材を通じて得た最新事情をお伝えします。

 小学生までの子どもを育てている親が、子どもの進路を考えるに当たり、まず知っておきたいのが、中学受験を取り巻く環境の変化。中学校と高校が一体化し、6年間を通じてじっくりと子どもを育成する中高一貫校に魅力を感じている人は少なくありません。

 特に、大学入試改革が迷走しているここ数年は、大学までエスカレーターで進学できる大学付属校人気が高まったこともあり、一貫校を支持する人が増加しています。首都圏の中学受験者数で見ても、この6年間は右肩上がりに増え続けており、2020年は約4万9400人(私立・国立中学校の受験者数。データ:首都圏模試センター、推定)となりました。

 今、この中高一貫校に大きな変化が生じています。

 「高校からの募集を停止し、『完全中高一貫』化する動きが相次いでいます。最近では、男子進学校の本郷高校が2021年度から、女子校の中でトップクラスの進学実績を誇る豊島岡女子学園が2022年度から高校募集を停止することを発表し、話題になりましたが、この動きは6年くらい前から始まっています。14年に高輪など2校が高校募集を停止したのを皮切りに、東邦大学附属東邦、開智日本橋学園、三田国際学園などが相次いで高校募集を停止してきました。都立の中高一貫校も同様で、都立富士、都立武蔵、都立両国、都立大泉が2021年度以降、順次高校募集を停止していきます。都立白鷗も時期は未定ですが、やはり募集停止します」。安田教育研究所代表の安田理さんはこう解説します。

 特に、豊島岡女子学園は、日比谷高校や西高校といった難関の都立高校を受験する女子の数少ない併願校とされているため、「上位大学への進学を目指す女子が、高校から入れる私立の選択肢が減ってしまう」と危機感を募らせている親も少なくないようです。

 ただ、「高校で入れないなら、中学から入るしかない」と、ますます中学受験する生徒が増える事態に発展するのかと思われていた矢先に、新型コロナウイルスの世界的流行による経済混乱という事態が発生してしまいました。中学受験に詳しい専門家の中には、「家計が厳しくなり、中学受験を取りやめる家庭が増える(中学受験者数が減る)」という見方がある一方で、逆に、「私立人気が高まる可能性もある」と指摘する識者もいます。

 中高一貫校が相次いで高校募集停止に踏み切っている事態を私たちはどう捉えればいいのでしょう。また、コロナ・ショックは中学受験にどんな変化をもたらすのでしょうか。中学受験と高校受験の最新事情を次ページから詳しく見ていきましょう。