家族だからうまくいくとは限らない

 かけがえのない子どもやパートナー。距離が近いからこそ、うまくいかないときもあり、子育てや夫婦関係において後悔を感じている人もいます。その経験を、今の人生にどう生かしているのでしょうか。

子育てにおける後悔…子どもに声を荒らげてしまった

 10年ほど前、長男が3歳から5歳くらいの頃、子どもに声を荒らげてしまった時期がありました。例えば、お出かけの日に乗ろうとしていた電車に乗れなかったとき、自分の怒りを「〇〇(息子の名前)の支度が遅かったから」と、彼のせいにして理不尽にぶつけていました。言葉だけでなく、手を上げてしまったこともあります。

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 本当は、子どもが悪いわけではなく、自分が処理しきれない感情を、弱い存在である子どもにぶつけているだけだと、頭では分かっていました。あのときの子どもの悲しそうな目……。思い出すと、今でも申し訳なくて涙が出ます。

 まずは、自分で自分の非を認められるようになること。そして、怒りが噴出して止められなくなりそうなときは、とにかく子どもと離れること。違う部屋に移動をしたり、可能であれば家族にお願いして数時間でも離れる時間を作るようにして、乗り越えるようにしました。(教育/専門職/年少と中1以上のママ)

夫婦関係の壁…離婚経験をビジネスに生かす

 大学を卒業してすぐに結婚と離婚。その後、2度目の結婚で生まれた子どもが9歳と10歳の頃、再度の離婚。相手の会社が倒産し、転職によって生活時間帯が変わり、夫婦の会話がなくなったことがきっかけでした。2回ともけんかをしない円満離婚でしたが、本質は相手と向き合っていないだけでした

 それが明らかになったのは子どもたちの反抗期。子どもたちが複雑な感情を抱えているのに、ワンオペで忙しかった私はきちんと向き合えず、子どもたちは口をきかなくなったり、家出したり。私は元夫が子どもたちと会うのを快く思っていませんでしたが、このとき初めて元夫に頭を下げ、「子どもたちが困ったら、いつでも電話をさせてあげてほしい、いつでも声を聞いてあげてほしい」と頼みました。そこから子どもたちに逃げ場ができ、気を使わずにパパに会えるようになったことで表情や態度が激変し、私との関係も改善しました。

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 子どもとも元夫とも、本音で向き合うことの大切さを知りました。今、子どもたちと私は3人それぞれ一人暮らし。とても仲良くなり、月に一度はご飯を食べたり、旅行に行ったりを楽しんでいます。その後、私は離婚時の住宅ローンのカウンセリングを行う現在の仕事に就きました。離婚、子育てを経験した私だからできる仕事だと思っています。(共有名義不動産問題研究所 入江寿さん/19歳と20歳のママ)

 人生は七転び八起き、失敗しない人なんてきっといないでしょう。大切なのは、失敗の経験をどう捉えて、学びに変えるか。もしかしたら、世間的に「失敗」とされている出来事でも、自分にとっては「かけがえのない経験」に変換できるかもしれません。

 絵本作家のヨシタケシンスケさんは、新卒で入社したゲーム制作会社になじめず、半年で退職しましたが、本人は「失敗だとは全く思っていない、むしろ得難い経験ができた」と話します。同日公開の「ヨシタケシンスケ 失敗は『勉強』『経験』と名付けよう」で詳しく紹介します。

 また、エッセイストの紫原明子さんは、起業家・家入一真さんとの離婚を経験。失敗は人生のターニングポイントであり、そこから何かが生まれると話します。紫原さん流の失敗論を、記事3本目で紹介します。

 4本目では、起業家の奥田浩美さんが、女性が管理職への昇進などの挑戦を避けがちな理由について分析。また、記事7本目では、注目のビジネス書作家、山口周さんに「ビジネスにおける失敗観の変化」について語ってもらいます。

 さらに、子どもの中学受験における成功・失敗とは何なのか、子育てにおいて「失敗」を回避するリスクとは……など、親として知っておきたい「失敗との付き合い方」も紹介していきます。本日から始まる特集に、ぜひご期待ください!

構成・文/久保田智美(日経クロスウーマンDUAL) イメージカット/PIXTA