仕事、子育て、夫婦関係…どれも「失敗したくない」ですよね。でも、キャリアに傷がついたら取り返せない? 親は完璧な見本でなければならない? いえいえ、きっとそんなことはないはず。親だって社会人だって人間だもの、失敗してもいいじゃない! この特集では、活躍する人たちの失敗談などに学びながら、失敗との向き合い方や、自分らしい乗り越え方についてのヒントをお届けします。

 子育て世代に大人気の絵本作家で、自身も二児のパパであるヨシタケシンスケさん。自らを「心配性でネガティブ」と称し、「いつでも最悪の事態を想定して生きている」と明るく話す一方、失敗をどう捉えるかは自分の考え方次第だとも言います。また、「失敗を経験して強くなろう、と無理に思わなくていい」とも。明るくて温かい、ヨシタケ流の「失敗論」とは――。本人の「最近の失敗エピソード」と併せて、語ってもらいます。

最初からネガティブだから、ダメな出来事も「想定通り」

 よく「失敗が怖くて一歩が踏み出せない」という話を聞きますが、それは、最初の理想が高すぎるんじゃないかなあ、と思います。

 僕はもともとかなりのネガティブで心配性なので、いつでも最悪の事態を考えているんですね。何をするにしても、「どうせ失敗するだろうな」と思っておく。そうすると、ダメだったときに「今回も全部想定通り!」と、余裕をもっていられるんです(笑)

「失敗」について語る絵本作家のヨシタケシンスケさん。最新作『あきらがあけてあげるから』(PHP研究所)が4月に発売された
「失敗」について語る絵本作家のヨシタケシンスケさん。最新作『あきらがあけてあげるから』(PHP研究所)が4月に発売された

 例えば何か企画を提案するとします。事前に「たぶん通らないだろうな」とか「いろいろ注文つけられるんだろうな」、などと心の保険をかけておきます。そうすると、もしも注文が少なければ「思ったよりよかった」とプラスの評価ができるし、却下されたとしても想定内。おかげでひどく落ち込むことがありません。30代で出版した最初のイラスト集が全く売れなかったときも、ダメージはありませんでした。

 もちろん、高い理想を掲げてそこに近づいていくことで、自分自身を向上させていく生き方は素晴らしいです。ただ、僕みたいなネガティブ思考な人間は、そこには乗り切れない。最低限のごはんを食べて死ななければ90点、くらいに思ってゆるゆる生きていってもいいのではないでしょうか。そうすれば人生ほぼプラスなことしか起きないし、世界はいつだって僕らにやさしい。多様性の時代なので、「こういうヤツがいたってよしとしていただけませんかねえ」と思うんです。

 それでも、失敗をどうしても自分を否定する材料として捉えてしまう人はいるでしょう。そういう人には、いろいろな人の失敗談とリカバリーの方法に触れることをおすすめしたいです。そのなかから自分に役立てられる方法を見つけて選択肢を増やしていくといいんじゃないかなあ。

 僕にも、人から見たら失敗と思われるような経験があります。


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