子育てや教育について「何か違う気がする」とひっかかることがあっても、じっくり考えることなく、そのままにしてしまっていませんか? 「とりあえずみんなと同じ」道を選択して安心しようとしている人もいるのではないでしょうか。

しかし、何かひっかかる背景には、自分の価値観とずれがあったり、社会的な問題が隠れていたりすることも。そうしたモヤモヤに向き合い、問題の本質を明らかにして考えることが、周囲に流されない子育てにつながっていくはずです。そこで本特集では、働く親が抱くモヤモヤについて、専門家に「そもそも、どうしてそうなっているの?」の疑問をぶつけました。ぜひわが子の子育て・教育のヒントにしてください。

学校教育は変革期

 「小学校の授業だけで学力が身に付くのか不安」「画一的な一斉授業に子どもが興味を持てずにいる」「クラスの人数が多すぎて先生の手が回っていない」「せっかくの探究学習も単なる調べ物学習になってしまっているのでは」……。わが子が通っている学校に対して、このように疑問や不安、不足感を抱えている人も少なくないのでは。

 自身も小学生と中学生の2児の父親で、学校教育に詳しい熊本大学教育学部准教授の苫野一徳さんは次のように話します。

 「今、確かに学校教育はさまざまな問題を抱えています。いじめや不登校、授業についていけない『落ちこぼれ問題』、学校の授業が簡単すぎることに苦痛を感じてしまう『吹きこぼれ問題』に加えて、児童や生徒が画一的な『やらされ勉強』に興味を持てなかったり、自分が本当にやりたいことは何なのかを見失ったりしてしまうなど、あらゆる問題が噴出しています。こうした状況にあって、従来の教育システムは既に賞味期限切れだと言えるでしょう。これは公立・私立にかかわらず言えることです」

 もちろん、独自の工夫で魅力的な教育を行っている学校や先生も存在するため、わが子が通う学校に満足している親もいるはずです。しかし、全体として、公教育(*)にほころびが生じていることは確かで、「当たり外れ」が大きいのが現状です。
*公教育とは、公国立・私立を問わず幼稚園から高等教育機関までの公的性格を持つ教育を指す。

 では今、子どもが通っている学校の教育のあり方に大きな不満や不安を感じている親は、学校には大きな期待はせずに、塾や家庭教師といった、代わりとなる学びの手段を探して補ってあげればいいのでしょうか。これに対し「社会全体から見れば、あくまでも大事にすべきは、誰もが通うことのできる学校教育のアップデートです」と苫野さんは強調します。

 「学校の本来の意義は、多様な人がいることで、お互いを認め合いながら一緒に生きていくという感覚を養える点です。こうした感覚は、多様性が増す社会においてますます重要です。だからこそ親は、学校をその本来の意義に向けた成熟へと促すことが必要。今は変革期と言えます」

 親はまず、学校の変革の方向性を理解するとともに、その変革のプロセスに当事者として積極的に参加すべきです。公教育はみんなで作り上げていくもの、と苫野さんは言います。では、学校は、どんな方向にどう変わろうとしているのでしょうか。公教育の意外な「そもそも」の目的とは? また、「わが子の成長を考えると、学校が変わるまでなど、とても待てない」という親が、今すぐできることはあるのでしょうか。

親が知りたい学校教育のそもそものギモンとは?

・変革期にあるという学校教育はどこに向かっている?
・目下、学校教育に感じる「不足感」はどのように補っていけばよい?
・親が子の学びに対して持つべき視点は?