勉強しなさい!と言わなくても、自分の好きなことを見つけて一生懸命学ぶ、意欲のある子に育ってほしい……。家庭学習の時間が増えている今、そう願う親は少なくないでしょう。子どもの脳と体が大きく発達する保育園~小学生時代に、親から子への関わり方で大切にすべきこととは何でしょうか。この特集では、「頭がいい子」が幼少期から家庭で実践してきたこと、共働きの親だからこそできる子どもの伸ばし方を、専門家や実例への取材で探っていきます。

50の文字を覚えるより、100の「なんだろう?」を育てる

 「頭がいい子」と聞いて、テストの点数が高い子を思い浮かべた人もいるのではないでしょうか。学習塾に通っていたり、幼少期から文字や算数、英語などを学ばせていたりする家庭の話などを聞くと、親としては焦ってしまうこともあるでしょう。

 しかし発達心理学・保育学の専門家で環太平洋大学教授の内田伸子さんは、「幼少期は、50の文字を覚えるよりも、100の『なんだろう?』を育てることを意識してほしい」と、話します。

 「大切なのは文字を覚えることよりも、文字で表現したくなるような内面の育ちがあるかどうかです。子どもは自分からやる気にならないと、なかなか学ぶことができません。しかし、関心を持てばあっという間に必要なことを身に付けてしまいます。だからこそ、自分で『やろう』とする力、自分で考える力を付けることが大切です」

 そのために、内田さんが提唱するのは、幼児期に思い切り「遊び」に打ち込み、さまざまな「体験」をすること。実は、この遊びと体験が、将来の学力の基礎となり、未来を生き抜くための大切な力にもつながっていくと言います。

 また、孫正義ソフトバンクグループ会長兼社長が若い才能を支援するために設立した「孫正義育英財団」事務局長として、いわゆる「頭がいい子」とも呼ばれる突き抜けた人材とその親を見てきた源田泰之さんは、「優秀な子ほど、自分の力をいかに社会に還元できるかを考えている。目標に対して素直に向かっていき、粘り強くやり切る力、思い切ったチャレンジをする力がある子は、大人になっても生き生きと働けている」と話します。そして、こうした子を持つ親の関わり方には、ある共通点があるとも言います。

 自分から学ぶ意欲のある子を育てるために、親はどのように子と関わればよいのでしょうか。記事の前半では、内田さんに幼児期から小学生までの子にとって親として大切な接し方を聞きました。後半では源田さんに、「頭がいい子」の親がしていること、これからの時代を生きる子どもたちに求められるスキルなどを聞いていきます(4ページ目)。