職場の人間関係が希薄になっている

 一方で、職場の人間関係は希薄になってきているようです。リクルートマネジメントソリューションズが20~40代の会社員603人を対象に2019年に行った調査では、回答者の半数弱の44.6%が「5年前と比べて、職場の人間関係が希薄化していると思う」と回答しました。

リクルートマネジメントソリューションズ「職場におけるソーシャル・サポート実態調査(2019)」より引用
リクルートマネジメントソリューションズ「職場におけるソーシャル・サポート実態調査(2019)」より引用

 希薄化を感じる理由についての自由回答では、「残業をするなと厳しく言われるようになって、残業中に雑談でお互いを知る機会がなくなった」(事務・40代・男性)、「利益追求のしすぎで社員が疲れている。ミスをしてはいけない雰囲気」(技術・30代・女性)、「パソコン上で仕事が完結し、面と向かった対話がない」(事務・40代・女性)、「ハラスメントが取り上げられて、人間関係が希薄になっていると感じる。私も若い子に何を話してよいか分からず、対応に疲れる」(技術・40代・女性)などがありました。

 生産性の向上を目標に掲げる企業は増え、テレワーク、ノー残業といった働き方が急速に広がっています。それに伴って職場で対人コミュニケーションの機会は減りつつあり、仕事帰りに飲みにいって仕事の相談をしたり愚痴を言ったりする、かつての「ノミニケーション」もあまり見られなくなるなど、職場の人との対面時間が減少しているのです。

 「人間関係が希薄なため、どのようにコミュニケーションをとればいいかが分からずに、ストレスを感じる」というようなことが今後増えていくかもしれません。その結果、チームに相談するより個人プレーのほうが気が楽だからと仕事を抱え込んだり、トラブルが発生しても上司や同僚に気軽に相談できずに自分で解決をしようとしてさらにストレスを抱えてしまう……。従来よりもストレスが複雑化していく可能性もあります。

 そうした人間関係ストレスを改善し、気持ちよく仕事をするためには、どうしていけばいいのでしょうか。今回の特集では職場の人間関係やメンタルヘルスに詳しい専門家らを取材し、スムーズに進まない対人コミュニケーションの悩みの乗り越え方を紹介していきます。

 多くの企業で研修を行う、日本セルフエスティーム普及協会代表理事の工藤紀子さんは「自己肯定感を高めると、職場の人間関係は良好になる」と話します。自己肯定感の低さによる行動が職場での良好な関係づくりを阻害するというのです。では、どのようにして自己肯定感を高めればいいでしょう。本日公開の記事「自己肯定感の低さの裏返し 6つの行動パターン分析」でたっぷりと紹介します。

 中小企業から社員数1万人以上の大企業まで多様な企業のメンタルヘルス対策などに関わる、東京大学大学院医学系研究科 精神保健学分野客員研究員の関屋裕希さんは、「人間関係ストレスの背後に隠れているのは、『怒り』『悲しみ』『落ち込み』『不安』などの『感情』。感情を押さえつけたり、なかったことにしたりするとストレスをため込むことになってしまいます。感情について理解し、味方につけることができれば、職場の人間関係ストレスから身を守ることは可能」と言います。具体的なストレスからの身の守り方は、近日公開予定の特集3本目の記事「上司「部下が動かない」部下「助けがない」悩み改善」で紹介します。

 そして、特集4本目では、お笑いのロザン宇治原さんに、育児中のビジネスパーソンにありがちなシチュエーションで、どのように空気を壊さず自分の主張をすればいいかのコツを教えてもらいます(「ロザン宇治原 職場で不快にさせない言い回しテク」)。

 急に導入が広がったテレワークになかなか慣れず、ストレスを感じている人もいるでしょう。特集5本目では「テレワークではダメ出しをしにくく、部下を育てるのが難しい」という上司の悩みや、「孤独を覚えて、ネガティブ思考になる」という部下の悩みなど、テレワークの「あるある」の解決法を紹介していきます(「テレワークで抱いた『イヤな感じ』は職場のノウハウに」)。

 人間関係がスムーズになってストレスが軽減されれば、毎日気持ちよく仕事をすることができますね。メンタル面の好調は仕事の生産性も向上にもつながります。ぜひお読みください。

文/日経DUAL編集部  写真/PIXTA