住宅購入は、人生において最も「大きな買い物」といっていいでしょう。晩婚・晩産化で、30代後半以降で親になるケースも少なくない今、「住宅資金」「子どもの教育資金」「老後資金」という3つのお金問題が重なってくるという人もいるかもしれません。また、コロナ禍で勤務スタイルが変化し、「持ち家を売って住み替えたい」という人もいるでしょう。首都圏では、特にマンション価格が高騰し続けており、買うタイミングを計りかねて様子見を続けている人も少なくありません。いつ、どこに、どう買えばいいのか……。共働き子育て世帯の「家の買い方」に迫ります。

「2馬力」は強いけれども…

 民間調査機関の不動産経済研究所の「首都圏 新築分譲マンション市場動向」2021年まとめによると、新築マンション平均価格は6260万円で、バブル期を上回って最高値を更新しました。「五輪後に下がるかなと思って待っていたけど……いったいいつ買えばいいの?」などのため息まじりの声も聞こえてきます。

 こうした首都圏のマンション市場は、「パワーカップル」がけん引しているといわれます。パワーカップルの定義はさまざまありますが、夫婦ともに高収入で世帯年収が高い共働き夫婦像が浮かびます。前述の調査によると、23区内の新築マンションの平均価格は8000万円台です。「では、例えば、世帯年収が1300~1400万円くらいの共働き夫婦は8000万円の物件を買えるのか。これは、ライフプラン次第です」。住宅購入や資産運用を専門とするファイナンシャルプランナー(FP)で、30~40代の共働き子育て世帯の相談を多く受けている平澤朋樹さんは言います。

 相談に来る家庭の「家を買いたい理由」で最も多いのは「家賃がもったいないから」だそう。「子どもが育ってきたり、人数が増えてきたりすると、それなりの広さが必要になり、次も賃貸で探すと賃料が上がります。例えば月20数万円の家賃を払うなら買ったほうがいいのでは、という考えに至る。加えて、会社の家賃補助がなくなった、あるいは、数年以内になくなるというタイミングで探し始めるケースも結構あります」

 夫と妻が「2馬力」で稼ぐ共働きは、「片働き」に比べると、住宅購入にも強いとされています。しかし、気を付けたい点はもちろんあります。「相談に来られる中で一番多いのは『物件は決まっています。契約がもうすぐです』という人。例えば新築マンションのモデルルームを見て決めた、あるいは、不動産ポータルサイトを見てすでに決めた、というケースです」。ただ、この順序は本当なら望ましくない、と平澤さん。

 「予算を試算する前に物件を探す人のほうが多いのですが、見に行ってしまうと、『次に待っている人がいます』『決断を1週間以内にしてください。1週間後に契約です』などと不動産業者に言われて急に話が進んでしまいます。まず適正な予算を試算するところから始めてほしいです」

 「適正な予算」とは、その家庭のライフプランに合っているかどうか。これから住宅購入を検討する人が「わが家の戦略」を立てるために知っておきたいことを平澤さんに聞いていきます。

【わが家の戦略のために知っておきたい5つのトピック】

◆住宅ローン控除の改正 メリットはまだある
◆「親の力」を借りる場合に知っておきたい税制
金利が低いからこその注意点は
住み替え想定ならどんな物件?
◆コロナ禍で増えた選択肢を上手に生かす

金利が低いから買いどき?

 前述のように、住宅価格が上がっている現況をどのように捉えたらいいのでしょう。「現在、住宅ローンの金利は低く、変動金利であれば、0.3%台で借りられます。金利が下がっているので、総返済額が下がり、物件価格の上昇を一部吸収していますが、金利低下のメリット以上に物件の価格が高くなっていますので、金利が低いから『買いどき』ともいえないと思います」と平澤さん。