男性育休の取得率は7%程度で、国が掲げる目標の13%にほど遠いのが実情です。政府は企業に男性育休の取得を勧奨する義務化を進め、22年から施行される見込みです。しかし、育休を取りたいけれど仕事に穴をあけたくないパパ、育休を取らせたいけど欠員補充がなくて悩むマネジャーなど、それぞれの立場ならではの悩みや課題はつきません。そうした課題を、先駆者や先進企業はどう乗り越えたのでしょうか。

男性の育休取得率向上は管理職次第

 男性育休の取得率向上のためには、現場を仕切る管理職が「イクボス」であることが大前提です。イクボスとは、部下の子育てなどのプライベート事情に対して理解のある現場のマネジャーを意味します。リクルートマネジメントソリューションズのシニアコンサルタント・主任研究員の武藤久美子さんは、「ここ最近、男性育休取得に注目が集まっていることもあり、多くの企業の経営層や人事部門から『イクボスを育成したい』という声が高まっているのを感じます」と話します。

 とはいえ、部下のプライベートに配慮するというのは、それほど簡単なことではありません。時間の制約があるメンバーや、育休を取るメンバーがいるからといって、部署やチームが担う業務の全体量を減らしてもらえるほど、現実は甘くはない場合が多いからです。

 また、女性が産育休を取得すると、数カ月から1年前後に及ぶため、その間、外部のリソースを活用したり、他部署から人が来たりと、欠員補充があるケースも少なくありません。一方、男性育休は、数日~1カ月といった短期の場合も多く、欠員補充があるのはレアケースです。「新型コロナウイルスで業績が悪化しているのに、『部下に育休をどんどん取らせろと言われても……』といった困惑が、管理職層から多く寄せられます」(武藤さん)

 管理職は、自組織の役割や目標を果たしつつ、男性の部下・メンバーに気持ちよく育休を取ってもらうために、どうすればいいのでしょうか。次ページ以降で、りそな銀行と日本HPの2人のイクボスの工夫を紹介します。

この方たちに聞きました!

・りそな銀行 御堂筋支店長の小川勝さん
 大学生の男の子二人と高校生の女の子のパパ。入行後は営業部門や採用部門などを歩んできた。昨年までは吉祥寺支店の支店長で今年から現職。「自分自身はあまり積極的に子育てをできなかったので、後悔している部分がある。男性部下たちには育児に関わってもらいたい」


・日本HP デジタルプレス事業本部カスタマーサービス本部本部長 礪波(となみ)徹さん
 年長の女の子と年少の男の子のパパ。平日は毎日、子どもを保育園に送る。日本HPが手がける印刷機のアフターサービス部門などを統括する。2人目の子どもが生まれたときに育休取得を考えていたが取れなかった。「異動などがたまたま重なり、チャンスを逃してしまった。男性部下には積極的に育休取得を考えてほしい」