男性育休の取得率は7%程度で、国が掲げる目標の13%にほど遠いのが実情です。政府は企業に男性育休の取得を勧奨する義務化を進め、22年から施行される見込みです。しかし、育休を取りたいけれど仕事に穴をあけたくないパパ、育休を取らせたいけど欠員補充がなくて悩むマネジャーなど、それぞれの立場ならではの悩みや課題はつきません。そうした課題を、先駆者や先進企業はどう乗り越えたのでしょうか。

 「世の中の体温をあげる」を企業理念に掲げ、駅構内や商業施設などを中心に、“食べるスープ”の専門店を展開しているスープストックトーキョー。社長の松尾真継さんは、第2子が誕生した2018年に1カ月の育休を取得しました。なぜ1カ月という長期の育休を取ることにしたのか、社長不在でも会社への影響が少なくて済むように事前にどのような対策をしたのかについて聞きました。

子育ての経験が「なんで?」を解決する事業のヒントに

 私には二人の娘がいます。上の子は2011年、下の子は2018年に生まれました。上の子が生まれたのは東日本大震災が起きて間もない時期で、当時は会社を維持することで精いっぱいだったこともあり、育休を取ろうという余裕は持てませんでした。でも、震災直後の状況下での子育てで妻も不安だったと思いますし、もっと育児に関わりたかったという思いがありました。ですから、下の子が生まれるときは育休を取りたいということは早い段階から考えていました。

オンラインで開催したSoup Stock Tokyoグランプリで、表彰店舗を発表するスープストックトーキョー社長 松尾真継さん
オンラインで開催したSoup Stock Tokyoグランプリで、表彰店舗を発表するスープストックトーキョー社長 松尾真継さん

 私たちの会社は「公私混同」ならぬ「公私同根」ということを言っています。これは創業者の遠山正道(現・スマイルズ代表取締役社長)が考えた造語なのですが、実際、当社では個人的な生活のシーンから思いついたことが事業になることが多いのです。無添加のスープを作ることにしたのも、遠山の家族がアトピー性皮膚炎で、少しでも体に良いものを食べさせたいと思ったことがきっかけで事業につながりました。

 男性社員が子育てや家事を経験することは、子育て中で人々が感じる「なんで?」という世の中への疑問やいらだちを解決する事業を生み出すためにも必要なことです。