男性育休の取得率は7%程度で、国が掲げる目標の13%にほど遠いのが実情です。政府は企業に男性育休の取得を勧奨する義務化を進め、22年から施行される見込みです。しかし、育休を取りたいけれど仕事に穴をあけたくないパパ、育休を取らせたいけど欠員補充がなくて悩むマネジャーなど、それぞれの立場ならではの悩みや課題はつきません。そうした課題を、先駆者や先進企業はどう乗り越えたのでしょうか。

 「育休を取得したい」。少し前なら、男性の会社員が上司にこんな相談をすれば、「何を言っているの?」という反応が返ってくることは珍しくなかったのではないでしょうか。そんな時代が変わりつつあります。企業のトップから政治家まで「男性も育休を取得するべきだ」という考えを持つ人が増えています。

 一方、実際の企業の現場ではなかなか男性の育休取得が進んでいません。なぜでしょうか。その背景に、本来、育休を権利として取得できるはずのパパの側で、自分が休んでも欠員補充がないから周りに迷惑をかけるのではないかという遠慮や、自分にしかできない仕事をしているという自負、責任感などもあるでしょう。「育休なんて取ったらポストを奪われる」といった恐れもあるかもしれません。

 一方で企業の側にも、人員に余裕がなく、育休を取った社員の欠員を補充できない、会社の風土として育休取得に対する理解が乏しいといった課題を抱えているケースもあるはずです。

 育休期間が長期であるママの場合は欠員が補充されやすい一方、数週間から数カ月程度の短期取得の傾向があるパパの場合は、補充されないケースも多く、周囲の理解を得ることが難しいのが現状です。

 育休を取りたいパパ、その上司、人事担当者は何に悩んでいるのでしょうか。

■育休を取りたいパパの声

・欠員補充がされない中で、自分が休んだら、部署(チーム)に迷惑をかけるのは目に見えている
・育休を取れるような雰囲気ではない。社長は「男性社員も育休を取るように」というが、現場の上司や同僚の意識とはギャップを感じる
・「手取りが減るくらいなら休まないでほしい」と妻が言う。「どうせ役に立たない」と思われ、育児や家事の戦力として期待されていない…

育休取りたいんだけどな…職場の雰囲気的に難しい(30代パパ)
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特集3本目「育休を『取る前の工夫』で仕事も育児もスムーズに」では、先輩パパたちがスムーズに育休を取得するために、職場でどのように段取りし、工夫をしたのかを紹介します。

■マネジャーの声

・一人減る穴を誰が埋めればいいのだろうか。社長や役員は「男性部下にも育休を取らせろ」と言うが、それなら予算と人がもっとほしい。または、業務量を減らしていいと言ってほしい
・欠員補充がない中で、他社の管理職がどうやって業務を回しているのかを知りたい

男性の部下が「育休取りたい」って言ってきた。歓迎したいけど、現場回せるのかな…(40代マネジャー)
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特集6本目「男性部下が育休申請、どうする? 凄腕マネジャーの技教えます」では先進企業のイクボスを紹介。先輩イクボスたちが実践している職場の雰囲気作りや業務効率化のノウハウを紹介します。

■人事担当者の声

・世の中では、「男性育休義務化」が進んでいるらしい…。わが社も早急に体制を整えなければ、採用にも関わってきそうだ。しかし、いつから、何がどう義務になるのか、複雑でよく分からない…

2022年から男性育休の制度の何が変わるんだ…?(人事部)
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特集2本目「どう変わる? 新・男性育休制度の解体新書」では男性育休に関する新制度を専門家が徹底解説します。

 男性育休に関する悩みが解決すること間違い無しの特集です。ご期待ください。

取材・文/飯島圭太郎