コロナ下でオンラインコミュニケーションが主流となり、在宅勤務という新しい働き方で生活スタイルは一変。働く親の負担は増えるばかりです。子どもたちにも大きなストレスがかかっています。そこで本特集では、働き方の専門家や産業医などに取材。ストレスフリーに生きるため、仕事や親子・夫婦間の適切な「距離の取り方」を提案します。

仕事の生産性やモチベーションを、どう維持するか?

 終わりの見えないwithコロナ生活。最近では、「この状況がいつか終わるのか」ということより、この状況が続くことを前提に、よりよい生き方を模索し始めている人も増えているかもしれません。その際、「ストレスを減らし、仕事の生産性やモチベーションを、どう維持していくか?」は、重要なポイントになるでしょう。

 そこで、人材紹介事業の会社役員、広報、編集者の3人の在宅勤務ママに、在宅勤務で抱えがちなストレスを解消し、モチベーションを保つための工夫を聞きました。産業医・精神科医の渡辺佐知子さんのアドバイスとともに紹介します。

今年に入って、再びメンタルヘルスの相談が増加している

日経DUAL編集部(以下、――) 渡辺さん、働く人たちのメンタルヘルスは、今年に入ってどんな状況にありますか?

渡辺佐知子さん(以下、敬称略) 私がアドバイザリーボードをしているメンタルヘルステクノロジーズに寄せられるメンタル不調の相談は、それまでは毎月数件程度だったものの、コロナ禍の昨年7月には100件以上に上りました。感染対策や在宅ワークにも慣れてきた現在においても相談件数が減ることはなく、2回目の緊急事態宣言後から、再び増加傾向にあります。以前に比べて、会社の業績悪化による雇用の不安など、生活に直接関わる相談が増えてきている印象があります。

―― Aさんは、人材紹介会社で役員をしています。転職を希望する人も、今年に入って増えているのでしょうか?

Aさん はい、増えていますね。この一年で子育て世代の人たちから、会社の「方針」を疑問視する声がよく聞かれました。例えば、最初の緊急事態宣言中は「子どもも学校に行けないし大変だから」といって、それまで担当していた業務から外されるなど、子育て社員に過度な配慮をする会社もあり、「会社の本音が透けて見えた」と感じた人も少なくありませんでした。配慮はありがたいですが、戦力外扱いをされるのでは話が変わってきます。

 また、既にリモートでも成果を上げられると分かった人たちからすると、緊急事態宣言解除と同時に出社することになるのは不毛です。それにより、リモートワークができる会社への転職を考え始めた人も多いように感じています。

ストレスを感じる、感じないの差はどこにあるのか?

―― 在宅ワークとなり、皆さんのストレスの状況はどうでしょう。仕事の生産性は「上がった」「下がった」「変わらない」のうち、どれに当てはまりますか?

Cさん 私は、完全に生産性が下がりました。通勤時間がなくなり生活にメリハリをつけにくくなりましたし、在宅ワークとなって、チームの人たちと協業できなくなり、会社にいれば数秒で済むことにタイムラグが生じています。

 以前は、帰宅時間から逆算して「1時間当たりの生産性」を高く保てていましたが、今は、仕事量は変わらないのに1時間当たりの生産性が半分くらいになった気がします。時間内に終わらせられない分、エンドレスに仕事をしていてストレスフルな日々を送っています。

Bさん 私は逆に、往復2時間の通勤時間がなくなり、1日にこなせる仕事量が増えました。コロナ前は、勤務時間内に終えられなかった仕事が山積していたので、今は、やりたい仕事もできるようになりストレスが減っています。

―― 同じリモート環境でも、ストレスを感じる人もいれば、感じない人もいるんですね。渡辺さん、その違いはどこからくるのでしょう?