どんなに仕事が好きでも、親になると「子どもを優先すべきでは」というマインドが生まれます。すると、子育てや仕事がうまくいかないときにふと顔を出すのが「やめたい」という気持ちでしょう。でも、再就職の厳しさを考えれば、やめないほうが賢い選択かもしれません。せっかくなら「やめたい」気持ちを飲み込むのではなく、ポジティブな行動やマインドで乗り越えていきたいものですね。そこで今特集では「やめたい」原因を解決するために知っておきたい攻めの戦略を紹介します。

 仕事をやめたいと思うワーママに向けて、マインドの持ち方や具体的な解決法を提案している本特集。今回は、やめたいという衝動が起きて実際に上司に退職を申し出た経験のあるワーママの事例を紹介します。


部署内のポジションチェンジでストレスがたまるように

 登場するのは3歳6カ月の男の子を共働きで育てている藤井真紀さんです。産業廃棄物の収集、運搬、処理などを手掛ける企業、三洋商事(東京・江戸川)に中途採用で入社して5年目。現在は営業部門の事務職として勤務しています。

 藤井さんが「やめたい」という衝動に襲われたのは、育休から復帰して1年半ほどたったときのことです。部署内でのポジションチェンジがきっかけでした。

 当時藤井さんが所属していたのは収集品の仕分けを行う部門。藤井さんも現場スタッフとして働いていましたが、部署内の事務担当者が退職したことから、パソコンスキルのある藤井さんが業務を引き継ぐことになりました。

 「同じ部署内とはいえ、仕分けをする現場とPCに向かう事務では仕事内容が全く異なります。25人ほどの部署で事務担当は私一人。さまざまな業務を一人でこなさなくてはいけなくて、気持ちに余裕がなくなりました。人が大きく入れ替わった時期で、部署内の体制がまだ確立していなかったこともストレスの原因になりました」

 藤井さんは少しでも働きやすい職場にしたいと業務改革を提案します。しかし、上司も異動してきたばかり。部署内の仕事の把握が優先されるタイミングだったこともあり、改革を実施するには難しい状況でした

 「現場部門なので突発的な業務が多いのもつらかったです。事前に1日の計画を立てておいても、その通りにいかないことは日常茶飯事でした。差し込まれた仕事でキャパシティーがオーバーになるとイライラして、上司にきつい物言いをしてしまうことがよくありました。

 ささいな失敗をした後輩を激しい口調で責めてしまうことも。言ってしまった後で申し訳ない気持ちになり、落ち込みました。ストレスから体調がすぐれない日もあったのですが『私がやらなければ』という思いもあって、頑張り続けていました」

 仕事でのストレスは夫婦関係や子どもの精神状態にも影響。子どもが癇癪(かんしゃく)を起こし、手が付けられないようになることもよくあったそうです。会社も家庭も苦しい。私のせいで子どもが良くない環境に置かれてしまっている……。そんな状況を変えようと、藤井さんはある学びを始めます。その後、上司に退職を申し出ますが、退職を知った別の部署の管理職が動いたことによって、藤井さんは慰留されることになりました。

 悪循環を断ち切るために、藤井さんは何を学び、どう行動したのでしょうか。また、慰留されたのは何がポイントになったのでしょうか。詳しく聞いていきましょう。

藤井真紀さん。産業廃棄物の収集、運搬、処理などを手掛ける三洋商事の営業部門で事務職として勤務している
藤井真紀さん。産業廃棄物の収集、運搬、処理などを手掛ける三洋商事の営業部門で事務職として勤務している