どんなに仕事が好きでも、親になると「子どもを優先すべきでは」というマインドが生まれます。すると、子育てや仕事がうまくいかないときにふと顔を出すのが「やめたい」という気持ちでしょう。でも、再就職の厳しさを考えれば、やめないほうが賢い選択かもしれません。せっかくなら「やめたい」気持ちを飲み込むのではなく、ポジティブな行動やマインドで乗り越えていきたいものですね。そこで今特集では「やめたい」原因を解決するために知っておきたい攻めの戦略を紹介します。

 「今のペースで仕事をし続けて、子どもの中学受験を成功に導けるような気がしない」「子どもの成績が上がらないから、自分が仕事をやめてサポートしなければ」。出産後、頑張って仕事と育児を両立してきたけれど、子どもが中学受験をすることになり、思うようにサポートができない現実に直面してはじめて仕事との両立に不安を抱き、離職を考えるワーママが一定数いるようです。

 働く親の中学受験サポートは、どれくらい大変なのでしょうか。離職を考えるほどの壁に直面したときの乗り越え方や、事前に備えておけることについて、家庭教師や学習コーチとして活躍している齊藤美琴さんに、前後編の2回に分けて詳しく聞いていきます。

共働き親にとって、想定される「壁」は

 齊藤さんは、SAPIXの個別指導部門プリバート東京教室や、大手の幼児教室の講師を経て独立。現在は、中学受験のコーチングや教科指導などをしています。齊藤さん自身も中学受験経験者で、SAPIXの黎明(れいめい)期の6期生として学びました。これまで齊藤さんが中学受験で指導に関わった家庭を振り返ると、半数以上が共働きの家庭だったそうです。

 「取り組む前の段階で悩んでいる場合は、中学受験のことが分からないゆえに『怖い』と感じ、子どもが未就学児の段階で、小学校受験と中学受験のどちらが大変か、と相談を受けることもあります。取り組み始めてからは、子どもの成績が伸び悩むなど、何かうまくいかない状態になったときに、『自分が働いているからかもしれない』という考えに陥ってしまいがちなようです」

共働き親が抱く「中学受験の気がかり」

◆ 塾の送迎や塾弁の用意まで、手が回らないかも…
◆ 子どもの成績が上がるも上がらないも親次第?
家庭学習の計画や進捗管理、プリント整理まで私がやるの?
◆ 中学受験の山はどこ? 入試直前は仕事どころではないってホント? その間、仕事はどう調整すればいい?
(乗り越え方&備え方を本記事で解説)

◆ 「時間のない親」のデメリットと、「働く親」であることのメリットは?
(後編で解説)

 想定される壁については、詳しい情報を得て事前に準備したり、外注をしたりすることで乗り越えられるものもあれば、親が時間を割いて関わらなければ乗り越えられないこともある、と齊藤さんはアドバイスします。

「塾ありき」で塾選びをスタートしない

 「知らない」ことが、「怖い」「不安」につながるので、まず情報を集めることが大事だと齊藤さん。「働いているママは、限られた時間の中で効率よく最大のパフォーマンスを出す能力に秀でていて、例えば、短時間で情報を集めてくるのもとても得意だと思います」。ただ、気を付けたいこともあるそう。