どんなに仕事が好きでも、親になると「子どもを優先すべきでは」というマインドが生まれます。すると、子育てや仕事がうまくいかないときにふと顔を出すのが「やめたい」という気持ちでしょう。でも、再就職の厳しさを考えれば、やめないほうが賢い選択かもしれません。せっかくなら「やめたい」気持ちを飲み込むのではなく、ポジティブな行動やマインドで乗り越えていきたいものですね。そこで今特集では「やめたい」原因を解決するために知っておきたい攻めの戦略を紹介します。

 働く親が最初に「仕事やめたい」という衝動に襲われるのは、復帰1年目かもしれません。想定される「あるある事例」やその対策、「やめたい」衝動を乗り越えるためのマインドの保ち方などについて、オンラインキャリア相談サービス「ミートキャリア」で法人顧客内の育休復職者カウンセリングを主に担当している、横尾有理さんに2回に分けて聞いていきます。

復帰1年目は本当に大変

 自身も7歳、5歳、2歳の子育て中という横尾さん。育休からの復職後に時短勤務をした経験もあります。「上の2人の子の育休をまとめて3年間近く取得したので、ブランクが長かったこともあり、生活リズムを戻すことからまず苦労した記憶があります。また、復職後は、産前と違って、何をするにも、子どもの体調など子どもの状況に左右されてしまいます。そんな中、時短勤務という限られた時間で成果を出さねばならなかったこと、また、両立のリズムがつかめるまでパートナーとの分担の調整にも時間がかかるなど、復職1年目はいろいろ大変でした」

 横尾さんは現在、企業に勤めるママなどを対象にした復職前セミナーの講師を務めたり、復職したママたちへの個別カウンセリングを行ったりしています。復職直後は、仕事でどんな成果を出すか以前に、育児・家事と仕事の両立自体の大変さに直面し、どんなバランスで現実的にやっていけば両立が可能になるのか、に悩んでいる人が多いそう。

 「子どもが夜中に起きてしまうといった理由で、夜もまとまった睡眠時間を取れていない方もいます。復職すると昼寝もできないため、体力的にも大変です。『とにかくつらいんです』『大変です』『モヤモヤをどうしたらいいのか分かりません』といった言葉を聞くことは少なくないです。復職1年目は、まず両立生活のリズムが整うまで、小さな障壁が本当にたくさんあります」

 そうした無数にある小さな障壁を、「仕事やめたい」衝動につなげないためには、それぞれの障壁をあらかじめ想定し、できるだけ準備しておくことが大切です。具体的な事前準備や、「やめたい」衝動に絡め取られないためにできることなどについて横尾さんに詳しく聞いていきます。

復帰1年目 「やめたい」衝動が起きる「あるある」事例

◆仕事と育児の両立が物理的につらすぎる←今回はココを解説
◆子どもの体調不良に振り回されて疲労困憊(こんぱい)←今回はココを解説
◆職場の誰かに頼ることが続いて申し訳ないと落ち込む←今回はココを解説
◆登園時に行き渋って子どもが泣くのを見て心が折れる←今回はココを解説

◆夫婦の分担やコミュニケーションがうまくいかずにイライラ(後編で紹介)
◆仕事が時間内に終わらない or 配慮されすぎて仕事がない(後編で紹介)

こんな時、どうする?

両立のために準備したほうがいいこと

 第一に、復職にあたり、自分の「役割が増える」ということを意識することが大事だと横尾さんはアドバイスします。「育休中は普通にやってきたこと、やれていたことを見直す作業は必要だと思います」