どんなに仕事が好きでも、親になると「子どもを優先すべきでは」というマインドが生まれます。すると、子育てや仕事がうまくいかないときにふと顔を出すのが「やめたい」という気持ちでしょう。でも、再就職の厳しさを考えれば、やめないほうが賢い選択かもしれません。せっかくなら「やめたい」気持ちを飲み込むのではなく、ポジティブな行動やマインドで乗り越えていきたいものですね。そこで今特集では「やめたい」原因を解決するために知っておきたい攻めの戦略を紹介します。

共働きママ&パパたちの「やめたい瞬間」を紹介

 やめたいという衝動が湧き起こるのはどんなときでしょうか。編集部ではアンケートを実施し、共働きママ&パパたちがどんなときにやめたいと思うのか、その衝動をどのように乗り越えているのか調査しました。

 自由記述欄には共働きママ&パパたちのコメントがぎっしり。他の共働き親へのアドバイスもバラエティー豊かに寄せられました。まずはやめたいと思った体験を紹介します。

 また、共働き親がやめるか働き続けるか迷ったとき自分に問うべきことや、判断材料とすべき現在の状況を、家族の経済学をテーマに出産や子育てを経済学的手法で研究している、東京大学経済学研究科教授の山口慎太郎さんに聞いていきます。

【仕事をやめたいと思った理由と乗り越え体験】

●仕事の負荷の重さ、子育てでの自己嫌悪にやめたい!
 仕事の負荷が重く、夜中まで残業したり、休日も仕事をしたりする生活で疲れ果て、、やめたくてやめたくて仕方ありません。私は時短勤務なのですが、ほかの社員と同じ量の仕事をしているため、子どもが寝た後や休日も仕事をしています。それだけやっても評価されず、当たり前の扱いをされてしまうのがつらいです。

 また、子どもたちに太陽の下で自由に友達と走り回れる時間を作ってあげたいのですが、実際は、午後は保育園の昼寝でほぼつぶれます。学童でもずっと室内です。専業主婦家庭の子どもたちが公園で毎日たっぷり遊ばせてもらっている様子を見ると、私にはできないと自己嫌悪に陥ります。(電気、電子機器/経営企画/正社員・時短勤務/43歳/年少と小1のママ)

●後輩が先に昇進したときにやめたかった!
 育休から復帰後、後輩が先に昇進し、職場にちょっと居づらいと思いました。(電気、電子機器/研究・開発/正社員・フルタイム/43歳/0歳と年少、小1のママ)

●中学受験のサポートができなかったときにやめたかった!
 現在中1の長女が小6のときに「中学受験させて」と言い出しました。仕事をしながらサポートするのは難しく、成績が思うように伸びなかったり、伸びても落ちたりしたりを繰り返しているのを見ていたら、本当にひやひやして、こっちまで胃が痛くなりました。(人材サービス/サポート/正社員・フルタイム/44歳/小1と小4、中1以上のママ)

●親の看病と中学受験が重なり、自身もダウンしてやめたかった!
 近居の母が突然倒れて、約5カ月間、入院療養しました。入院中は、終業後に自宅の家事をした後、実家へ行き、父の食事の支度に洗濯。週に2回、子どもの塾の送迎もこなしました。平日の昼休みは、主治医やケアマネージャーとの面談、介護認定申請、高額療養費申請のため、電話をしたり、市役所に出向いたりしていました。

 私自身も慢性的に睡眠不足で疲労が蓄積し、倒れて救急搬送されたり、運転中に一瞬居眠りをしてしまい車の接触事故を起こしたり。いっそ仕事をやめたいと思いました。(卸売・小売業・商業/財務・管理/正社員・フルタイム/48歳/小6のママ)

●下の子の発達の悩みと上の子の小1の壁が直撃し、やめたかった!
 下の子が乳幼児健康診査で引っかかり、大学病院に何度も通い検査を受けました。同時期に上の子が就学して小1の壁にぶち当たり、同級生に嫌がらせを受けました。下の子が発達障害だろうということで、療育につながるための手続き。上の子のいじめ対応で小学校と学童、それぞれと面談。とにかく毎日が忙しくてしんどかったです。(食品・医薬・化粧品/研究・開発/正社員・フルタイム/41歳/2歳と小1のママ)

 仕事や子育て、昇進の遅れ、親の看病など、さまざまなことが原因でやめたい衝動が湧き起こっていることが分かります。そんな共働き親たちに、山口さんは「やめたいという衝動が湧き起こったら、次のことを自分に問いかけてほしい」とアドバイスします。詳しく聞いていきましょう。

この記事で読める内容

●「やめたい」衝動が起きたときに自分に問いかけたい3つのこと

●迷ったら「とりあえずやめない」ほうがいい理由
●定年まで働き続けた場合と、やめて再就職した場合の生涯所得差は
●ワーママたちの「やめなくてよかった」理由
●「今、やめたい」ワーママへのアドバイス