子どもが生まれると、「親なのだから」「子どものためだから」といった義務感から知らず知らずのうちに自分自身を縛り、プレッシャーをかけてしまっていないでしょうか? 本特集では、「そのこだわりは本当に必要なのか?」というところに立ち返り、専門家や各界で活躍するパパやママたちへのインタビューを通じて「~ねばならない」の手放し方に迫ります。

頑張る共働き親を楽にする 「~ねばならない」の手放し方

 「家業を継ぐべきだ」。こんな周囲の声に、あらがい続けてきた人がいます。創業76年、「イシイのミートボール」などで知られている食品メーカー、石井食品の5代目社長、石井智康さん(39)です。

 2019年には育休を取得し、子連れ出社をしたことでも話題を集めた、共働きパパ社長の石井さんは18年、祖父が興した石井食品の社長に就任しました。大学を06年に卒業後、外資系コンサルティング企業、ベンチャー、フリーランスと渡り歩いた後のことです。

 「親の七光りをあてにして、同族企業に戻ったわけではありません。家業は継ぐべきでない。僕は中学生になったくらいの時期から、このことを信念にしてきました。でも、そんな『意地』が、さまざまな『ねばならない』を手放す中で、徐々に薄れていったんです」

 「36歳で石井食品に入社した時点では、『こうでなければいけない』という固定観念はほとんどゼロになっていました。今では、そういう考えには仕事をする上でもデメリットしかないと思っています。固定観念を取り除き、広くアンテナを張り、情報を集め、事業をアップデートしていくのが僕の使命だと考えています」

 同社の歴史の中で、男性社員の中で育休を取得したのは石井さんで2人目。ちゅうちょなく育休取得を決めたのは、「社長は(男性は)育休を取得すべきではない」といった固定観念が、そもそも石井さんの中にみじんもなかったからこそです。そこにも「~ねばならないは悪でしかない」という、石井さんの信念が透けて見えます。

 では、石井さんはこれまでに、どんな「~ねばならない」を手放してきたのでしょうか。話を聞きました。

石井智康(石井食品代表取締役社長)

千葉県出身。2006年にアクセンチュア・テクノロジー・ソリューションズ(現アクセンチュア)に入社。ソフトウエアのエンジニアとして、企業の社内システム構築に携わる。09年にセレッテ入社。14年、フリーランスとしてソフトウエア開発業務をする。17年に祖父が興した石井食品に入社。18年に社長就任。1歳の女の子のパパ。

日経DUAL編集部(以下、――) なぜ、「家業を継ぐべきでない」と考えていたのでしょうか。

石井智康さん(以下、敬称略) 祖父が興した会社ですので、石井食品を継げるのだからいいね、と周囲から当然のように言われ続けました。だからこそ意地になっていたんでしょうね。易(やす)きに流され、同族企業に就職することは、自分のプライドが許さなかったんです。大学に入ったあたりから、「自分の力で生きていける能力と技術がほしい」「ビジネスの相手とプロとして対等にやりとりしたい」という信念を持つようになりました。卒業後、外資系コンサルティング会社のアクセンチュアにシステムエンジニアとして入社したのも、そうした考えによるものです。

―― それが一転、17年には石井食品に入社し、翌年には社長に就任しました。どう考え方が変わったのでしょうか?

次ページから読める内容

  • 外資系勤務時代に消えた、自分を縛っていた「余分」なねばならない
  • 大手では見えなかった「ねばならない」に気づいた
  • 自信が付いたことで見えてきた家業の別の姿

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