子どもが生まれると、「親なのだから」「子どものためだから」といった義務感から知らず知らずのうちに自分自身を縛り、プレッシャーをかけてしまっていないでしょうか? 本特集では、「そのこだわりは本当に必要なのか?」というところに立ち返り、専門家や各界で活躍するパパやママたちへのインタビューを通じて「~ねばならない」の手放し方に迫ります。

 上編に続いて、作家の山崎ナオコーラさんと医師の鈴木裕介さんの対談をもとに、私たちが抱える「~ねばならない」について考えていきます。下編では、手放すべき、残すべき「~ねばならない」とはそれぞれどういうもので、どうしたら手放すことができるのか聞きました。

【上編】山崎ナオコーラ×鈴木裕介/上 〜ねばならないの正体は
【下編】山崎ナオコーラ×鈴木裕介/下 「べき思考」どう手放す←今回はココ

山崎ナオコーラさん
作家。2004年、会社員をしながら書いた『人のセックスを笑うな』(河出文庫)で第41回文藝賞を受賞、作家活動に専念する。1歳と4歳の子どもと、書店員の夫の4人暮らし。

鈴木裕介さん
内科医・心療内科医・産業医。研修医時代に近親者の自死を経験し、ライフワークとしてメンタルヘルスに取り組む。2018年に「セーブポイント(安心の拠点)」をコンセプトとして秋葉原内科saveクリニックを仲間と共に開業。

残す、捨てる「~ねばならない」をどう判断する?

日経DUAL編集部(以下、――) 山崎さんは、子どもが生まれてから「時間に遅れてはならない」「あいさつをしなければならない」といった「~ねばならない」をいっそう強く意識するようになったとのことでした。ただ、これらは「社会の常識」とされており、まったく無視することはできません。どのように折り合いをつけていけばいいのでしょう?

鈴木裕介さん(以下、敬称略) 基本的には、お互いに困らない状態であればいいと思います。たとえば、私のクリニックが夕方から診療を始めるのは、会社帰りの患者さんが多いから、というのが表向きの理由です。しかし本当のことをいうと、僕が朝起きられないというのもあるのです。ただ、それも需要と供給がマッチしていて家族や周囲の人たちがそのことを理解してくれているなら、まったく問題ないわけです。

山崎ナオコーラさん(以下、敬称略) 「仕事は朝からやらねばならない」というのも思い込みですよね。ただ、思い込みを手放すことってすごく難しい。私は、「時間に遅れてはいけない」という思い込みを手放そうといざやってみたら、人格が崩壊するほどイライラしました。


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