朝、子どもがなかなか布団から出てこなかったり、やっと出てきても朝食をのんびりゆっくり食べていたり……。そんな姿を見てイライラして子どもを叱りつけ、保育園や小学校に送り出したあとはぐったりしてしまって、なかなか仕事モードに切り替われないという悪循環に陥る親もいるのではないでしょうか。そうした共働き家庭にありがちな朝のイライラやバトルは、親子ともに心理的にも肉体的にも大きなダメージとなります。回避するために、どうすればいいのでしょうか。そのヒントを紹介します。

 「学校の宿題は終わった?」「塾の勉強は終わった?」――子どもに毎日同じような小言を投げてばかりで、そろそろ気力がなくなりそう……。そんな親のつらさを解消し、親子ともに時間的・精神的余裕のある生活を送る第一歩として、勉強時間を朝にシフトする「朝勉」は選択肢の1つになります。

 とは言っても、毎朝のあわただしさから、「子どもの勉強の時間を捻出するなんて到底無理」とはなから諦めてしまっている共働き家庭もあるのではないでしょうか。そこで、「朝勉」の具体的な取り組み方と、無理なく続けるコツについて、『頭がよくなる 朝15分学習法』(ダイヤモンド社)の著書を持つ、ふくもとさわこさんに教えてもらいました。

自らの経験を機に、朝学習を提案

 「子どもが朝学習する習慣を身に付けると、勉強効率が上がって子どもに良い変化が生まれます。親も自分の時間を楽しむ余裕ができます」とふくもとさんは言います。

 例えば晩ご飯のあとは「おなかがいっぱいだし、もう眠い」と、子どもがだらだらしてしまいがち。学校から帰ったり、スイミングやサッカーといった習い事から帰ったりしたあとも疲れて、勉強をスタートしようとすると、子どもがぐだぐだしてしまうこともあるでしょう。

 ふくもとさんは、朝勉の効果を20年近く前、自身の子育てで感じたそうです。子どもが通っていた塾の宿題になかなか手を付けず、隙があれば遊びに行こうとする。夕食後に宿題に取り組もうとしても、進まない。そこで、ふくもとさんは子どもたちに言いました。「学校から帰っても、塾の宿題が終わらないと、遊びに行ったらダメよ」

 体を動かすのが大好きなふくもとさんの子どもたちにとって、それは最後通告のようなもの。「遊ぶ時間を失うわけにはいかない」と子どもたちが額を寄せ合って出した結論が、朝のうちに宿題を片付けてしまうことでした。翌日から、子どもたちは自分たちで目覚ましをかけて早起きし、いの一番に塾の宿題に取り組むようになったそうです。

 自分が起きたときには子どもたちが塾の宿題を終えている状況に、「ものすごく気が楽になって、家の中の雰囲気が良くなったのです」とふくもとさんは振り返ります。

 その後、自身が塾の教室を始めると、当時の自分と同じように「子どもに宿題をさせるのが大変だから」という理由で辞めさせる親が何人もいることに気づきます。

 「せっかく通い始めてくれた子どもたちになんとか続けてほしいけれど、宿題が家での親子ゲンカのもとになるのはしのびない。そのとき、ふと自分の子どもたちのことを思い出して、『宿題は朝、やらせてみませんか』と親御さんに提案したのです」

 それですぐに、子どもたち全員ができるようになるわけではありませんでした。「宿題をやらせようとしても逃げてしまいます」「子どもが、朝ご飯を食べたら、ぼーっとしてしまって取り組めません」などなど、親御さんからはさまざまな相談が寄せられました。その一つひとつに向き合い、ぴったりの朝学習を考えて提案し続けているうちに、「これなら誰でもスタートできて、続けられる朝勉」の内容が定型化されてきたといいます。

 ふくもとさんが生徒たちと試行錯誤して確立した、朝学習する習慣が子どもに無理なく、簡単に身に付く方法をお伝えします。