朝、子どもがなかなか布団から出てこなかったり、やっと出てきても朝食をのんびりゆっくり食べていたり……。そんな姿を見てイライラして子どもを叱りつけ、保育園や小学校に送り出したあとはぐったりしてしまって、なかなか仕事モードに切り替われないという悪循環に陥る親もいるのではないでしょうか。そうした共働き家庭にありがちな朝のイライラやバトルは、親子ともに心理的にも肉体的にも大きなダメージとなります。回避するために、どうすればいいのでしょうか。そのヒントを紹介します。

「落ち着いた朝の時間」と「子の学力」に相関関係

 共働き家庭の朝は時間との闘いとなりがちですが、朝がスムーズで、気分よく1日がスタートすると、その日1日のクオリティーがぐっと高まるように感じたことはないでしょうか。それが気分の良しあしにとどまらず、子どもの学力にも好影響を及ぼすと知ったらいかがでしょう。がぜん朝時間を改善したい、という気持ちになるのではないでしょうか。

 コンスタントに気持ちの良い朝時間を過ごすことができるということは、朝のサイクルができているということ。そのことと、子どもの学力との間に相関関係があることが明らかになっています。

 文部科学省が全国の小学生と中学生の児童・生徒を対象に実施し、基本的生活習慣などについて調べた平成31年度(令和元年度)「全国学力・学習状況調査」によると、小学生・中学生ともに「朝食を毎日食べ」、「毎日同じくらいの時刻に起き」、「(兄弟姉妹以外の)家の人と学校でのできごとについて話をする」子ほど、国語や算数、英語の平均正答率が高い傾向が見られることが明らかになりました。

 親子のコミュニケーションに関しては朝に限った話ではないですが、親子で過ごす時間に限りがある共働き家庭にとっては、朝も親子がコミュニケーションをとれる大事な時間。つまり、朝のコミュニケーションも大切だということが想像できます。

毎日、同じくらいの時刻に起きていますか?(縦軸は「正答率」)

朝食を毎日食べていますか?(縦軸は「正答率」)

 こうしたデータを見ると、「朝は特に大事にしたい」と思う人も多いはず。ですが、実際の共働き家庭の朝の風景はどのようなものでしょう? 理想に反して、なかなか起きなかったり、着替えや登校・登園の準備をせずにダラダラ過ごしたりする子どもにイライラし、朝から怒ってしまうということもあるかもしれません。

 「朝にイライラしたり怒ったりしてしまうのは、親子ともに不安定な時間帯だからです。特に共働き親は、子どもの登校・登園時間に加えて、親の始業時間という締め切りもあり、『(学校や会社に)遅れてしまうのではないか』という不安な気持ちを抱えています。一方、子どもは、朝はまだ眠いなど『生理的欲求』が満たされていません。親からイライラや怒りを向けられた子はさらに精神的に不安定になるという悪循環が生まれてしまうため、朝は家庭内がイライラや怒りに支配・翻弄されてしまいやすいのです」。臨床心理士・公認心理師で認知行動療法の専門家の松丸未来さんはこのように話します。松丸さんは小学2年生と年長の2児の母親でもあります。

 松丸さんによると、朝がイライラや怒りによって支配されることは、短期的にはその日の親子の1日の生産性やクオリティーに、長期的には子どもの思考や親子双方の健康に至るまで大きなダメージを与えてしまうのだそう。次のページからイライラや怒りによる弊害について詳しく聞いていきます。

次のページから読める内容
朝から子にイライラ その弊害とは?
1:親子のその日への影響
2:子どもの成長に関わる深刻な影響
3:親子の健康への影響