夏も終わりに近づいた8月27日、全4回にわたる環境学習プログラム「食とくらしがつくる地球の未来 みんなでいっしょに考えよう 〜 夏休みチャレンジ〜」(食とくらしのサステナブル・ライフスタイル研究会、川崎市主催)の最終回が実施されました。当日は川崎の小学5年生 21人とその保護者が川崎市産業振興会館に集まり、4日間に及んだ「夏休みチャレンジ」を通して気づいたこと、学んだことを、将来にわたってどう生かしていくのかを考え、発表しました。この夏休みの間に、すっかり頼もしくなった21人の成果を、修了式の様子とともにお伝えします。(取材・文=松田慶子、写真=北山宏一)

 「夏休みチャレンジ」は、味の素や花王、環境・CSRコンサルティングのイースクエアが2011年に設立した「食とくらしのサステナブル・ライフスタイル研究会」と、環境先進都市である川崎市の主催による、体験型環境教育プログラムです。運営に当たるのはNPO法人ビーグッドカフェ。川崎市と企業、NPO、さらに家庭が連携するユニークな取り組みです。
 このプログラムを通じて、未来を担う子どもたちが、毎日の暮らしと環境課題とのつながりに気づき、その解決のために、自分のライフスタイルを見直し、未来の心豊かな暮らしに向けて行動する力を身につけてもらうことを目的としています。ごみ処理施設や洗剤、食品の工場見学のほか、環境についてのお話や実験、グループワーク、さらに環境日記をつけるといった、多彩な活動が盛り込まれています。

 「夏休みチャレンジ」最終日となる今回は、前回、子どもたちの宿題となっていた家庭での「エコうま」料理づくりの報告からスタートしました。

 環境にやさしく、おいしい「エコうま」料理を、それぞれの家庭で2回作ってみよう、という宿題に対し、参加者の1人、あやちゃんは「冷蔵庫の残り野菜で野菜炒めを作りました。にんじんの皮は捨てずにみそ汁に入れました」と発表。エコな工夫も忘れていません。

 かいとくんは、前回の調理実習で習った「ほんだし」を混ぜ込んだおにぎりに再挑戦。「握るときの力加減が難しかった。でも家族はおいしいといってくれました」と、嬉しそうに話しました。

 「レンジで作るとりのチャーシューは、レンジに入れたまま余熱を使ってやわらかく。炊飯器でご飯と同時ににんじんのグラッセも調理したからエネルギーもエコ。ご飯を炊くときに、とうもろこしの芯からだしが出るからいっしょに炊いた」とじんたろうくん。エコな調理法を考えてくれたようです。

子どもたちは一人ひとり自分の「エコうま」料理を発表。「野菜の皮や青ネギの先っぽも全部使ってチャーハンを作ったら、ごみは卵の殻だけだった」「昼に残ったソーメンでチヂミを作った」など、工夫がいっぱい飛び出しました
子どもたちは一人ひとり自分の「エコうま」料理を発表。「野菜の皮や青ネギの先っぽも全部使ってチャーハンを作ったら、ごみは卵の殻だけだった」「昼に残ったソーメンでチヂミを作った」など、工夫がいっぱい飛び出しました

「エコは毎日の積み重ねなんだね」

 続いて、初回から、見学したこと、お話を聞いたこと、体験したことなどを振り返りました。

 第1回は川崎市のごみ処理施設、浮島処理センターの見学から始まりました。かつては多摩川の汚染など、公害が問題になっていた川崎市が、環境先進都市になった背景に、市民はもちろん、行政や企業の努力があったことなどを学びました。

 第2回は花王の川崎工場を見学。容器やダンボールなどを薄くする、つめかえ用パックを作るなどの取り組みを学んだほか、すすぎ1回で洗える液体洗剤の実験などを通して、資源の有効活用や、資源循環の大切さについて考えました。

 第3回は味の素の川崎工場を訪れ、「ほんだし」用のかつお節を作る時、カツオをムダなく活かし切ることやカツオの生態調査をしている話を聞いたほか、「エコうま」料理の体験では、食材を "活かし切る" ことを実践しました。さらに、工場の排水処理施設を見学し、企業の環境への配慮を目の当たりにしました。

親子いっしょに過去3回のプログラムを振り返りました。「1週間分のごみが多すぎてびっくり!」「地球には人間が使える水がほんの少ししかないと聞き、驚いた」「味の素の工場が小さな町くらいあった!」「再資源化率が100%だと習った」など、さまざまなポイントが挙がりました
親子いっしょに過去3回のプログラムを振り返りました。「1週間分のごみが多すぎてびっくり!」「地球には人間が使える水がほんの少ししかないと聞き、驚いた」「味の素の工場が小さな町くらいあった!」「再資源化率が100%だと習った」など、さまざまなポイントが挙がりました

 この間、1カ月以上にわたり、子どもたちには「できるだけ毎日、環境日記をつけてみよう」という宿題も出され、家庭でも1日1回はエコを考える時間を持ちました。

 子どもたちは、ごみ処理施設、花王の工場、味の素の工場、排水処理施設など、それぞれの場所で学んだこと、印象に残ったこと、さらに家庭で実践したことを、パパやママたちといっしょに振り返りながら、自由にカードに書き出していきました。

 「ごみ処理施設で、手作業でごみを一つひとつ分別していることにびっくりした」とは、あいりちゃんの感想です。

 「排水処理場の水をきれいにする取り組みのおかげで、多摩川がきれいになった。魚がたくさん戻って来てくれてうれしい」と、しーちゃんが川崎ならではの意見を書いてくれました。

 家庭でも、「ごみの分別に気を付けている」「つめかえ品があるときは、そっちを買うようになった」「弟が水を出しっぱなしにしていたので、水と電気の大切さを教えた」と、みんながそれぞれ実践している様子でした。

 「排水処理場を見てから、汚れた水をあまり流さないように、水を使う時から節水に気をつけています。エコな生活は、毎日のちょっとした工夫の積み重ねだなと思いました」という感想も聞かれました。家にいるときもエコについて真剣に考えたことが、カードに書かれた言葉の端々からうかがえます。

「夏休みチャレンジ」での体験や、家でのエコ活動を通して気づいたことを紙に書いて貼りだしていきます
「夏休みチャレンジ」での体験や、家でのエコ活動を通して気づいたことを紙に書いて貼りだしていきます

暮らしの中で "エコサファリ" を楽しもう

 次は環境カードゲームへの再挑戦です。日本だけでなく、アフリカなどでも環境活動に取り組むイースクエアのコンサルタントであるエクベリ聡子さんから、第1回の時の「自分の暮らしと地球環境とのつながり」のお話の振り返りがあった後、子どもたちは「水」「食」「資源」の3つのチームに分かれました。

 自分たちの「家」を中心に、どんな物が生活とどう関わっているのか、暮らしと物とのつながりを見つけるゲームに取り組みました。たとえば、「水」であれば「お風呂」「シャンプー」など直接関連するカードから、「工場」「森」などの文字が書かれたカードまで、模造紙にランダムに貼られているカードを見ながら、つながりを考えていきます。一見、関係のなさそうな物が、実は「水の循環という視点」でつながっていることを発見するといった具合です。

熱心に作業する「食」チームの子どもたち。多くの食品が捨てられていること、将来、食料が不足する心配があることを学んだだけに、子どもたちは食品をムダにしない方法について、積極的に話し合っていました
熱心に作業する「食」チームの子どもたち。多くの食品が捨てられていること、将来、食料が不足する心配があることを学んだだけに、子どもたちは食品をムダにしない方法について、積極的に話し合っていました

 プログラムの初日にも挑戦した環境カードゲームですが、最終日とあって、エクベリさんから、さらに一歩踏み込んだ課題も出されました。「みんなが大人になる2050年には、人類が今から25億人も増えると言われています。そんな中で、誰もが楽しく暮らし続けるためには、どうしたらいいのか、つながりの中で工夫できる点はないか、見直してみましょう」とエクベリさん。

 初日には少し戸惑ってしまった、簡単には正解の出ない問題です。しかし、この1カ月あまり、環境に関するさまざまな課題について、一生懸命学び、考えてきた子どもたちはひるむことなく、意見を言ったり、思いついたアイデアを新たなカードに書いたりと、積極的に取り組みました。

 終了後、各チームから発表がありました。まずは「食」チームです。「『食べ残し』が出ないよう料理を作り過ぎない、『料理』では火を使い過ぎないことが大切です。『野菜くず』も出るので、余った食材を他の料理に使う発明をするといいと思います」とアイデアを語りました。さらに「生ごみを『ミミズ』に分解させて『土』にするとか、豚や鶏の『飼料』にする方法もあると思います」と、エコな知識に基づく提案も盛り込みました。

チーム全員で話し合った結果を発表します、協力すること、他の子の意見を聞くことも、何度も経験しました
チーム全員で話し合った結果を発表します、協力すること、他の子の意見を聞くことも、何度も経験しました

 続いて「資源」チームは『豚汁』をキーワードに発表。「『豚汁』を作った後に『食器洗い』をすると、排水が出ます。その使った水は『海』に行き、『海』で育ったカツオが『ほんだし』になって、また『豚汁』に使われます。このつながりを無理なく続けるには、『水』の出しっぱなしも食べ残しもしないこと。したら罰金を払うというルールを作ればいいと思います」。ユニークな発想に、拍手と笑いが起こります。

 「水」チームは、「環境に配慮した『シャンプー』を選ぶ」「『食器洗い』の水は鉛筆の太さで」など、前回までに教わった知識をフル活用して、水を大切にする工夫を発表しました。「『シャワー』に使う『電気』は『ソーラーパネル』などで発電する」「残さず食べてごみを減らす」など、水と食や資源とのつながりを理解しているからこその意見も出ていました。

 各チームの発表を聞いたエクベリさんは、子どもたちに語りかけました。「『こんな動物はいないかな』と森や草原などで探すことを、 "サファリ" といいます。これからも家庭の中で、『もったいないはないかな?』『もっと環境のために役に立つ方法はないかな?』と、みなさん、 "エコサファリ" を続けてくださいね」。

楽しくて豊かで、エコな未来を描いてみよう

 昼食後は、いよいよ最後のプログラム「大人になったある日の自分を描いてみよう」です。

 大人になった自分は「どんな仕事をしている? どんな場所に住んでいる? 休日の過ごし方は? そして、どんなエコをしている? 」との投げかけに、これまで習ったこと、得た気づきを生かして、1人1人が自分の未来の暮らしを自由に想像して、文章に書いたり、絵を描いたりして、みんなに発表しました。

 子どもたちが文章や絵を描いている間、「夏休みチャレンジ」を支えてきたスタッフは、子どもたちが提出した宿題の環境日記やプログラムへの感想文を読みました。

 「ムダなことも工夫すればエコになります。これからもムダを見つけ、エコに変えていきます」「環境日記を読み返して、エコは楽しいと気づきました。エコな取り組みを、世界に広げていきたい。まずは自分の学校でエコを教えていきたいです」

 環境のために、自ら考え行動できる力をつけてほしい。この「夏休みチャレンジ」に込められたメッセージを、子どもたちがしっかり受け止めている様子が日記や感想文の文面から浮かび上がり、スタッフたちから感動の声が上がりました。

「未来の自分は、何をしている?」。すぐにペンを動かせる子も、じっくり考える子も。「何て書いた?」と話し合う姿も
「未来の自分は、何をしている?」。すぐにペンを動かせる子も、じっくり考える子も。「何て書いた?」と話し合う姿も

 いよいよ子どもたちからの最終発表です。

 未来の自分の姿について「サッカー選手になって、ハワイで公園の近くのプール付きの家に住みたい」と発表したのは、あるくんです。「公園やビーチにごみを捨てる人がいたら注意をしたい。小さくなったサッカーシューズは、捨てずに誰かにあげる」。

 「人の暮らしがもっと便利になるような道具を発明して商品化したい」とまみちゃん。「きれいな夜景を見られる家に住みたい。夜景はLEDライトの明かりだといいと思う」と書いたのはしーちゃんです。21人が描いた未来の自分は、いずれもエコへの高い意識を持ち、エコに取り組む意欲にあふれていました。

 未来の自分を発表し、確実に成長を遂げた子ども一人ひとりに対し、夏休みチャレンジの期間中、子どもたちのサポーターを務めたスタッフからメッセージが贈られました。

 「発表からも環境日記からも、気づいたことをすぐに調べる行動的な姿勢が伝わってきました。その行動力を大事にしてね」「たくさんの "もったいない" を見つけてくれてありがとう」自分の発表や環境日記など、書いたこと、したことを見ていてくれたからこそのメッセージに、子どもたちの顔には、照れ混じりの晴れやかな笑顔が浮かんでいました。

「家ではグリーンカーテンを育てます」「ケーキ屋さんになりたい。家庭菜園をしたい」子どもたちは、未来の自分のエコな取り組みについて発表しました
「家ではグリーンカーテンを育てます」「ケーキ屋さんになりたい。家庭菜園をしたい」子どもたちは、未来の自分のエコな取り組みについて発表しました

たくましく感性豊かな未来の担い手に!

 いよいよ修了式です。

 川崎市環境局地球環境推進室担当課長の井田淳さん、花王のサステナビリティ推進部長の柳田康一さん、味の素グローバルコミュニケーション部PR・CSRグループシニアマネージャーの長谷川泰伸さん、さらにエクベリさんから、修了証と記念の写真が子どもたち一人ひとりに手渡されました。この修了証には、エクベリさんが活動するアフリカのザンビアで採れるバナナの茎の繊維などを原料にした「バナナペーパー」という紙が使われています。

 4人からは、最後の挨拶がありました。

 「まずは自分が住む地域を好きになり、そこから世界に視野を広げて、エコに取り組み続けてほしいと思います」(井田さん)

 「環境問題は暗い話題が多いけれど、みんなで力を合わせれば、きっと楽しく豊かな生活ができる。そんな希望が持てました。みなさんに勇気づけられた4日間でした」(柳田さん)

 「社会は未完成で、環境課題がたくさんあります。これからもいっしょに学んで、すばらしい未来をつくっていきましょう」(長谷川さん)

 「みんなの未来が地球の未来になるんですね。私たち大人も、もっといい社会をつくってバトンタッチしなくては、と思いました。みなさん、この『バナナペーパー』の修了証を見るたびに、この夏の経験を思い出して、エコに取り組んでくださいね」(エクベリさん)

 いずれも、それぞれの生活に戻っていく子どもたちへの、励ましと感謝にあふれた言葉でした。

 これを受けて、保護者たちも一言ずつ感想を語りました。

 「貴重な経験ができました。確実に今後の暮らし方が変わると思います」「小学5年生という年齢で、エコを考える機会を得たことは貴重」「来年以降も、このプログラムを続けてほしいと思います」

 満足したという感想とともに、パパやママたちからは、「苦労した」という声も。「親子で、こんなに真剣に取り組まなくてはいけないとは思いませんでした」と話したママも。でも最後には「それもいい経験だった」という実感に変わったようです。

 「工場見学という言葉にひかれて気軽に申し込んだので、学習内容の濃さに最初は親子で驚きました。子どもは、環境日記にも苦戦していたようです。それでも日が経つにつれ、黙っていても自分から日記を書くようになりました。がんばった娘に、私からもお礼をいいたいと思います」「ここまでがんばれるとは思いませんでした。娘を見直しました!」

 「自分のことだけでなく、みんなのことを考えないとエコはできない。息子がそう気づいてくれたことが、親としては嬉しいですね」と感想を話すママもいました。

 自分と地球環境とのつながりを考えることに加えて、最後までやり抜く力と自信、それによって、ひとまわり広がった視野。子どもたちもパパやママたちも大切な宝物を得た夏休みとなったようです。

多くのことを学んだ4日間。最後には、一人ひとりに修了証が手渡されました。「これからも親子でエコを続けていきます」。保護者にとっても、学びの多い夏だったようです
多くのことを学んだ4日間。最後には、一人ひとりに修了証が手渡されました。「これからも親子でエコを続けていきます」。保護者にとっても、学びの多い夏だったようです

夏休みチャレンジの様子はこちらでも紹介されています。
http://begoodcafe.com/news/challenge2016