川崎市に住む小学5年生とその保護者が、環境について体験し、学び、考えるプログラム「食とくらしがつくる地球の未来 みんなでいっしょに考えよう ~ 夏休みチャレンジ~」(食とくらしのサステナブル・ライフスタイル研究会、川崎市主催)の第2回「花王ワクワク工場探検」が、8月9日に開催されました。
自分たちが暮らす川崎市のごみ焼却施設や資源化処理施設を訪れ、行政の環境への取り組みを学んだ第1回に続き、今回は花王の川崎工場を訪問。商品開発、製造、配送などのそれぞれの過程で、企業がどのように、温室効果ガスであるCO2の削減や資源の有効活用に取り組んでいるのか、見学や実験をまじえ、説明を聞きました。さて、子どもたちは今回はどんな気づきを得たのでしょうか。(取材・文=松田慶子、写真=北山宏一)

 「夏休みチャレンジ」は、味の素や花王、環境・CSRコンサルティングのイースクエアが2011年に設立した「食とくらしのサステナブル・ライフスタイル研究会」と、環境先進都市である川崎市の主催による、体験型環境教育プログラムです。運営に当たるのはNPO法人ビーグッドカフェ。川崎市と企業、NPO、さらに家庭が連携するユニークな取り組みです。
 このプログラムを通じて、未来を担う子どもたちが、毎日の暮らしと環境課題とのつながりに気づき、その解決のために、自分のライフスタイルを見直し、未来の心豊かな暮らしに向けて行動する力をつけてもらうことを目的としています。ごみ処理施設や洗剤、食品の工場見学のほか、環境についてのお話や実験、グループワーク、さらにテーマに沿った環境日記をつけるといった、多彩な活動が盛り込まれています。

 「夏休みチャレンジ」2回目の会場は、川崎市川崎区にある花王川崎工場です。

 午前中は、多くの子どもが楽しみにしていた工場見学です。最初に工場の概要と見学のポイントについて説明がありました。

 「花王川崎工場は、24時間体制で、主にお洗濯や住まいの洗剤やシャンプーなどを製造、出荷しています。容器もここで作っているんですよ。他の工場で容器を作ってから、この工場に運んでくると、その分、輸送のトラックがたくさん必要になり、トラックが排出するCO2も多くなってしまうんです。容器の原料を持ってきて、中身と一緒にここでつくる方が、ずっとエコなんです。

 ほかにも、製造から配送までの各段階で色々とエコになるような工夫をしています。今日は楽しみながら学んでくださいね」(花王サステナビリティ推進部エコ戦略推進グループの大鹿正人さん)。

流通過程のCO2を減らす工夫を間近で見る

工場見学は子どもたちに人気のプログラム。「ロボットの働きに驚いた」「いろいろな動きをする機械が見られて面白かった」と大好評でした
工場見学は子どもたちに人気のプログラム。「ロボットの働きに驚いた」「いろいろな動きをする機械が見られて面白かった」と大好評でした

 いよいよ見学に出発!

 最初に訪れたのは、洗剤や柔軟仕上げ剤などの工場です。この日は衣料用洗剤の「フレグランスニュービーズジェル」や柔軟仕上げ剤「ハミングファイン ローズガーデンの香り」など、おなじみの製品の詰め替え用パックを製造していました。

 工程はすべて自動化され、詰め替え用パックは、口の部分が開いたまま、立った状態で流れてきます。洗剤を入れて封をすると、機械が回転し、パックを横向きに寝かせます。続いてロボットアームが素早く段ボールに詰めていきます。この「寝かせる」という工程がミソです。

 案内役の大鹿さんが説明します。「以前は、詰め替え用パックは立てた状態で段ボールに詰めていましたが、今は寝かせて詰めています。なぜかというと、寝かせると、中身の液体が下の方にたまらずに、容器が薄く平らな状態になるので、1箱にたくさん詰めることができるからです。立てたまま詰めると40袋しか入らなかったのに、寝かせて入れることで、48袋入るようになりました。花王はたくさんの製品を作って出荷しているので、全体として大きなエコになるんです」

 
ダンボールの厚さを1㎜薄くしただけで、こんなにコンパクトに。大量の製品を送り出している花王だけに、小さな積み重ねが大きなエコになると分かります
ダンボールの厚さを1㎜薄くしただけで、こんなにコンパクトに。大量の製品を送り出している花王だけに、小さな積み重ねが大きなエコになると分かります

 感心した様子の子どもたち。さらに大鹿さんが続けます。

 「この段ボールも、箱の構造を工夫することで、強さを保ったまま厚さを5㎜から4㎜に薄くしました。たった1㎜の違いですが、その分、トラックに多く積めるようになり、同じ枚数の段ボールを工場に運ぶのに、今までトラックが5台必要だったところが4台で済むようになりました」。

広大な自動倉庫に、製品が整然と並ぶ光景は圧巻! 「出荷しやすいように位置や組み合わせを計算して収納してあります」との説明も。みんな熱心にメモをとります
広大な自動倉庫に、製品が整然と並ぶ光景は圧巻! 「出荷しやすいように位置や組み合わせを計算して収納してあります」との説明も。みんな熱心にメモをとります

 製品を詰めた段ボール箱は、ベルトコンベアで倉庫に送り、パレットと呼ばれる輸送用の台に積んで保管します。8階建てのビルに相当する広大な完全無人化された自動倉庫に、ぎっしりと積まれた膨大な量の段ボールに、子どもたちは、あ然とした表情でした。

「いろいろな工夫のおかげで洗剤がコンパクトになったと分かった」「今と昔の大きさの違いに驚いたし、もっといろいろ比べてみたい」と好奇心が刺激された様子の子どもたち
「いろいろな工夫のおかげで洗剤がコンパクトになったと分かった」「今と昔の大きさの違いに驚いたし、もっといろいろ比べてみたい」と好奇心が刺激された様子の子どもたち

 続いて、シャンプーやコンディショナー、ボディソープなどの工場へ。詰め替え用パックの原料となるプラスチックの量は、本体ボトルに比べて約6分の1と少ないこと、本体ボトルを何度も繰り返し使えば、最終的に処分される本体容器そのもののごみの量も減って環境にやさしいこと、また本体ボトルそのもものの改良も進んでいて、使われるプラスチック量が以前の約半分になっていることなどの説明もありました。

 子どもたちは実際に業務用製品の新旧のボトルを持ち比べて「全然違う。新しいほうが軽いってはっきり分かる」(なおちゃん)と話していました。

資源を循環させる工夫と努力を体験してみる

 午後はエコ戦略推進グループの藤井靖之さんによる、クイズと実験を盛り込んだ授業から始まりました。

 「地球上の資源には2つの種類があります。植物や動物など再生できるものと、使うと無くなってしまうもの。石油や石炭、金属などは無くなってしまう資源です。ではクイズです。石油はあと何年分あると思いますか?」 おもいおもいに手を挙げてもらった後、「正解は約46年分です。では金は? 実は今の調子で掘っていくと20年で無くなってしまいます」

 「えっ、20年経ったら金メダルが作れなくなっちゃう」と、今年の夏らしい感想がともかちゃんから飛び出しました。

工場で見学した詰め替え用パックの箱詰めを自分たちで体験しました。最初は上から詰めていき、「あれ、入らない」と戸惑う様子も
工場で見学した詰め替え用パックの箱詰めを自分たちで体験しました。最初は上から詰めていき、「あれ、入らない」と戸惑う様子も
「横にするって言ってたよね」「箱を押さえておくね」。積極性や協調性を発揮できるのも、チームでトライするおかげ
「横にするって言ってたよね」「箱を押さえておくね」。積極性や協調性を発揮できるのも、チームでトライするおかげ

 「だからこそ、大切なのは資源を循環させること。必要最低限だけ自然から採って製品を作り、使い終わったら資源として工場に戻して、繰り返し使うことが大切です。花王が容器をコンパクトにしたり、積み方を工夫したりするのは、そのためなんですよ」(藤井さん)

 ここで、資源を効率的に使う花王の取り組みを、ゲームを通して体験します。5つのチームに分かれ、段ボールにびっしり入ったボディソープの詰め替え用パックを一旦箱から出し、もう一度詰めていくというゲームです。一見簡単そうですが、子どもたちは悪戦苦闘。どうしても全部が入りません。そのうち「あっ、さっきの工場では寝かせて入れていた」と、気づく子どもが現れ、無事、全チームが箱に入れることができました。

「簡単に最後まで入ったよ」。どんなにエコな行動も、難しければ習慣にはなりにくいもの。簡単に詰め替えられる工夫も重要であることを学びました
「簡単に最後まで入ったよ」。どんなにエコな行動も、難しければ習慣にはなりにくいもの。簡単に詰め替えられる工夫も重要であることを学びました

 また、包装容器開発研究所の岩坪貢さんからは、容器の開発についての説明がありました。

 「詰め替え用パックはポンプ容器よりずっとエコですが、開けにくかったりこぼれやすかったりすると、詰め替えが嫌になりますよね。そこで私たちは、使いやすくて環境にやさしい容器を開発しようとしています。新たに開発した『つめかえ用ラクラクecoパック』にはキャップを付けました。また、持ちやすいように円柱の形にしました。これまでのパックに比べて、素材のフィルムの量は約3割減らして、資源を節約しています」

  子どもたちは、実際に『つめかえ用ラクラクecoパック』を本体ボトルに詰め替えてみました。すると「ぐらつかないから詰め替えが簡単!」と声が上がりました。パックに中身が残らず、スッキリ詰め替えられる手応えのよさから、「気持ちいいし楽しい!これからは詰め替え用パックを使うようにしたい」(りなちゃん)との感想も。

水を大切にするとは? 実験で納得!

「多摩川の汚染が改善されたことは前回、習いましたね。洗剤メーカーも、自然の力で分解されやすい成分で洗剤をつくる工夫など、水を大事にする努力を続けています」と花王の新井さん
「多摩川の汚染が改善されたことは前回、習いましたね。洗剤メーカーも、自然の力で分解されやすい成分で洗剤をつくる工夫など、水を大事にする努力を続けています」と花王の新井さん

 次は、花王のサステナビリティ推進部戦略企画担当部長の新井賢二さんによる、水の循環に関するクイズと実験の時間です。

 「地球を直径75㎝のバランスボールだとすると、人間が使える水はどれくらいの大きさだと思いますか?」新井さんが用意した選択肢は4つです。「ヤシノ実ぐらいかな?オレンジくらいかな?それともプチトマトぐらい?朝顔の種ぐらいかな?」との実物を示しながらの問いかけに、「うーん、オレンジぐらい?」「ミニトマトだと小さすぎるかも」といった声が上がります。

 ところが「実は、朝顔の種1粒分しかありません」という意外な答に「それっぽっち!?」と息を飲む子どもたち。

 「その水を、地球上のすべての人がずっと使い続けるには、やっぱり循環させることが大事。水をなるべく汚さず、うまく循環させることが、“水を大切にする”ということなんです。

日本の家庭では1人1日200~250ℓの水を使っていて、その多くが洗剤と関わっています。お風呂や手洗い、食器洗い、洗濯…。だから洗剤を作る会社は、なるべく水を汚さず、循環させるための取り組みを絶えず続けているんですよ」

 そうした研究の結果、開発された商品の一つが、少量で洗えて、すすぎは1回でOKという衣料用洗剤です。

実験はチーム全員が協力し、役割を分担して取り組みました。「ボールペンのインク、薄くなってる?」と、子どもたちは結果にも興味津々
実験はチーム全員が協力し、役割を分担して取り組みました。「ボールペンのインク、薄くなってる?」と、子どもたちは結果にも興味津々

 これが本当にエコなのか、チームごとに確かめる実験をしました。

 まず、2枚の布に油性ボールペンでそれぞれ「×」を書き、一方にこれまでのタイプの洗剤をスプーンに2杯、もう一方に少量で洗える新しい洗剤をスプーンに1杯たらします。次に、小さい洗濯機に見立てた、ボールと水を入れたプラスチックボトルに、それぞれの布を入れて、同じ力で30回振ります。すると…。

 「新しい洗剤のほうが×が薄くなってる!」と、違いに驚く子どもたち。「新しい洗剤は、振るのをやめると、すぐに泡が消えた」(りせちゃん)と泡切れの違いも観察できました。

 実験が始まると、子どもたちはそれぞれ声を掛け合って作業を分担するなど、徐々にチームワークも見られるように。みんなで手を動かして結果が出ると、自然に笑顔もこぼれました。

 別テーブルでは、ママたちも同じ実験にチャレンジしました。

 「こういう実験はCMでは見るけれど、信用していませんでした(笑)。でも、本当によく落ちますね」という感想も。

 新井さんからは、「すすぎ1回の洗剤を使うときは、洗濯機の設定をすすぎ1回に直すことも忘れないでくださいね」というアドバイスもありました。

 地元の多摩川が大好きで、洗剤が河川に与える影響を知りたいと話していたほのちゃんは「いろいろな洗剤が売られているけれど、こういう、環境のことを考えた新しい洗剤を買うとか、詰め替え用パックを買うとか、川を汚さないために私たちにできることはいっぱいあるな、と思った」と話します。

子どもたちのエコに対する意識変化は…

 第一回の夏休みチャレンジで、子どもたちは川崎市のごみ焼却施設で、ごみの量の多さや、再資源化のためには、最後は人の手で分別をする様子を目の当たりにして、驚いていました。その日から、子どもたちには「環境日記をつける」という宿題が出されていましたが、その日記を見せてもらったところ……

 「近所のお祭りで、屋台から出るごみが気になった」「エアコンはタイマーを使い、ムダがないようにした」「歯磨きをするとき、水を流しっぱなしにしない」など、日々の気づきや行動がつづられていました。

 ママたちにも、第一回以降、家庭での子どもたちのエコに対する行動に変化があったか、尋ねてみました。すると、「特に変わったところはないんです」という声もあった一方で、「子どもが家のごみの分別に気をつけるようになりました」「節電や節水を心がけているようです」という声も聞かれました。

2日目の内容を記録するスタディノート。工場見学や実験の結果、感じたことなどを熱心に書き留めます
2日目の内容を記録するスタディノート。工場見学や実験の結果、感じたことなどを熱心に書き留めます

 最後に、前回同様に1日の振り返りをして、この日のプログラムは終了。盛りだくさんの内容で、長時間集中し続けた子どもたちですが、帰路のバスの車窓から、「またね」と元気いっぱいの笑顔で手を振ってくれました。

 初対面の仲間との恥ずかしさも見られた前回に比べ、互いに打ち解けはじめた子どもたち。回を重ね、確実に多くのことを体得しているようです。次回まで、各家庭でどんなことに目を留め、どんなアクションを起こすのか、報告が楽しみです。

 第3回は8月18日に、味の素の川崎工場で開催され、子どもたちは食材をむだにせず活かしきる取り組みを学んだり、エコクッキングに挑戦したりしました。こちらの様子も近日、紹介する予定です。

8月9日の夏休みチャレンジの様子はこちらでも紹介されています。
http://begoodcafe.com/news/challenge2016