農園を歩く人、人、そして、犬。国籍、文化、言葉を超えた繋がりに感動させられます
農園を歩く人、人、そして、犬。国籍、文化、言葉を超えた繋がりに感動させられます

カリフォルニア州アーバインに、30エーカーからなる広大な敷地に広がる農園、タナカファーム(TANAKA FARM)があります。ここは、毎日、私達が食する野菜や果物が大切に育てられている場所。この豊かな農園は、南カリフォルニアで暮らす日本人をホッとさせてくれるココロのふるさとでもあるのです。(文:白井朝美 写真:HALE DAVIS)

第二次大戦で苦しんだ日系人

教育、エンターテイメント、ツアー、買い物などタナカファームは、楽しさ一杯
教育、エンターテイメント、ツアー、買い物などタナカファームは、楽しさ一杯
マーケットスタンドには、畑直送の新鮮野菜と果物が陳列しています
マーケットスタンドには、畑直送の新鮮野菜と果物が陳列しています

 1920年、広島県から米国・南カリフォルニアに移民してきたタナカ・テルオ氏。日系一世と呼ばれる多くの日本人は、移民労働者として農業に従事していましたが、当時は、市民権を得ていない外国人に対して、土地の貸借や購入の制限、または、禁止するなどの外国人土地法が施行されており、日系一世らの生活は、決して楽とはいえませんでした。

 そして、1941年12月7日(ハワイ現時時間)、日本軍による真珠湾の攻撃により、アメリカ市民であっても敵性外国人と見なされた日系人は、日系人排除政策の下、日系人リーダーの検挙、外出禁止、さらには自宅から立ち退きを迫られ、スーツケース1つで鉄条鋼で囲まれたバラック、強制収容所へと移送されてしまいます。

 当時の日系人らが米国で生きていく道は、ただ一つ。米国の兵士として戦場で戦う事。選択の余地すらない状況の中、多くの若き日系2世らが戦場へと向ったのです。

 日米開戦の直前の1940年、タナカファームは、誕生しました。様々な苦難を乗り超えてきたタナカファームは、人と人、コミュニティーを繋ぐ架け橋。地元に愛され続けています。

農業体験もできるファーム

甘くて美味しいイチゴ狩りも楽しめますよ♪
甘くて美味しいイチゴ狩りも楽しめますよ♪

 タナカファームでは、イチゴ、キュウリ、スイカやトマト、マウイオニオンなど、季節野菜や果物の栽培・収穫に留まらず、農家直送新鮮野菜と果物の販売、野菜や果物狩り、農業体験や農園ツアーなど、子どもから大人まで、一年を通してアクティビティを楽しむことができます。

農家を支援し、家族を養うこと。それが、タナカファームのミッション。私達は、NO FARM NO FOODだという事を忘れてはいけませんね
農家を支援し、家族を養うこと。それが、タナカファームのミッション。私達は、NO FARM NO FOODだという事を忘れてはいけませんね

 また、各学校に通う生徒がタナカファームで採れた野菜を詰めたボックス(25ドル)を学校を通して購入すると、タナカファームから学校へ5ドルが寄付されるといった仕組みもあります。

 地域を支え、地域に支えられる農業CSA(Community Supported Agriculture)の取り組みが活発に行われています。タナカファームのCSA活動は、農家がコミュニティーを支え、各学校が地元農家を支援し、子どもたちの健康と食生活の見直しを図るもの。この活動は教育機関や家族からも高い評価を得ています。

イベントで“希望の種”をまく

特大ヘラペーニョBBQ。新鮮ヘラペーニョは、辛オイシイ!
特大ヘラペーニョBBQ。新鮮ヘラペーニョは、辛オイシイ!

 様々なコミュニティー活動を精力的に行うタナカファームでは、2011年3月11日、東日本大震災の発生以来、希望の種をまこうというテーマのもと開催している”WALK THE FARM”イベントがあり、日本の東北地方の小規模な農家を支援するイベントとして盛り上がりを見せています。

 同イベントでは、一日、農園を開放して、農園内に展示されている被災地の様子を伝える語りや写真を見ながら現地の理解を深め、点在する試食ブースで摂りたての野菜や果物を食べたり、畑からイチゴを摘んで頬張ったりするなどして、農園内1.5マイルを歩きます。

 また、日本を紹介するブースが設けられ、和の伝統を伝える歌や楽器演奏などのパフォーマンスもあり、毎年、参加者の耳を楽しませています。

イベントに集まったボランティアの皆さんがお野菜と果物をもてなしてくれます
イベントに集まったボランティアの皆さんがお野菜と果物をもてなしてくれます

 今年は、企業支援52社、参加者数2300人、650人のボランティアが参加。寄付金10万ドルが集まりました。このうち7万ドルは、日本の被災地の農家へ、3万ドルは、中部カリフォルニアで干ばつの被害を受けている農家へと全て寄付されます。

 タナカファームを運営する日系3世のグレン・タナカ氏は、これまで、日本の農家との繋がりはなかったといいますが、東日本大震災での津波に飲み込まれた農地や流された温室の映像を見て、農家を営む人間として、何かの助けになりたいと同イベントを立ち上げたといいます。

希望の種を蒔こう!参加者は、足を止めて被災地の状況を伝える展示物を読んでいました
希望の種を蒔こう!参加者は、足を止めて被災地の状況を伝える展示物を読んでいました

未来を背負う子どもたちのために

希望の種を蒔き続けるコミュニティーリーダー。日系3世のグレン・タナカ氏
希望の種を蒔き続けるコミュニティーリーダー。日系3世のグレン・タナカ氏

 震災の翌年の2012年、タナカ氏は、被災地へ足を運びました。2014年は、“TOMODACHI-MUFG国際交流プログラム”で被災地からの中高生がタナカファームを訪れた学生たちと交流を図りました。「今後は、未来を背負う子どもたちが世界で活躍していくためにもスカラシッププログラムを取り入れるなどして、教育に力を注いでいきたい」と話します。

 近年、記録的な干ばつの影響を受けているカリフォルニアでは、土壌が劣化した農地が広がり、季節労働者の激減、利益の損失、農産物の高騰、雇用や賃金、若者の農業離れの問題などの問題が膨らみ、農家を取り巻く現状は、日々、厳しくなっています。それでも、同イベントは継続していくと話すタナカ氏。

「生きていれば、様々な大きな壁にぶつかります。それが、どんなに高い壁でも、どんなに辛い暮らしであったとしても、前へ進むことを恐れないように。未来のこどもたちのためにも、私達が土台をつくっていかねばなりません」(タナカ氏)。

 ここタナカファームで蒔かれた種は、未来への種。太陽の光を浴びながら、小さな芽を出すその種は、時には、激しい豪雨に打たれながらも、ゆっくりと力強く大地に根を下ろしていきます。私達には、希望がある。夢がある。地に足を着け、自らの力で考えぬき、行動できる人間となれと、この大地からの声が聞こえてくるようです。

とにかく皆、元気一杯!農家へ応援メッセージを送ります
とにかく皆、元気一杯!農家へ応援メッセージを送ります
TANAKA FARMS
5380 3/4 UNIVERSITY DR, IRVINE, CA 92612 U.S.A.
www.tanakafarms.com
白井朝美
NYで金融機関勤務、ダンサー。L.A.でハリウッドパパラッチ隊、ランジェリースタイリストを経て、現在は、フリーランス・ライター&コーディネーター。ペットスタイリスト&ウエルネスアドバイザーとして活躍中。朝錬のランとヨガとジュースで朝活に励むベジィ・ジャンキー。毎月、第一金曜日は、ラブピースクラブで朝吠えコラムを連載中。
http://www.lovepiececlub.com/lifestyle/california/