台湾東北部にある宜蘭県は田舎ゆえ農業がさかんです。近年ではオーガニック農場も登場し、農村の様子や自然について学習できる体験施設として人気に。素朴な田舎らしい滞在は、ちょっとエコフレンドリーでした。夏休みの旅先に、気軽に出かけられる台湾はいかが?(文・写真:トラベルライター 岩佐 史絵 取材協力:チャイナエアライン)

意外な穴場!台湾・宜蘭でエコツアー

 エコツーリズムブームの昨今。自然を楽しむことを目的に山海に出かけてゆくのですが、台湾をその旅先に選ぶ人は少なそうな印象です。だって、台湾といえば食の天国。小籠包の牛肉麺、タピオカミルクティーなどを目当てに食い倒れツアー! という人も多いでしょう。

 宜蘭県は台北から高速道路でわずか30分ほどのところにある、海に面した県です。海岸線近くにまで山が迫っていることもあり、風光明媚、かつ温泉もある保養地となっています。日帰りで気軽に訪れることができるレジャー農場も数多く、そのどれもがDIY(Do It Yourself)という体験型アクティビティを擁しており、中にはかなり本格的に農業体験ができる施設もありました。

博物館で見るような、金属のように光るさなぎがたくさんぶら下がっていました
博物館で見るような、金属のように光るさなぎがたくさんぶら下がっていました

 今回訪れた頭城農園はオーガニックファームの先駆けとして36年前にオープン。120エーカーの敷地内には田畑にフルーツ農園、家畜が飼われ、まさに農村の雰囲気です。水路のすぐ上には芋虫がびっしり(!)の“昆虫だな”も。蝶々が水辺に集まる習性を利用したもので、ここに産み付けられた卵が芋虫からさなぎに、そして蝶になるまでを観察することができます。堆肥の作り方や伝統料理の作り方など、学べる内容が幅広く、子どもから大人まで十分に楽しむことができそうです。

農作業用に貸してくれる衣装がカラフル(笑)。長靴も貸してくれます
農作業用に貸してくれる衣装がカラフル(笑)。長靴も貸してくれます

メインとなるアクティビティは畑仕事体験。さまざまな野菜や果物が育てられており、それらを自分で収穫します。中には日本では見かけない珍しい野菜なども。農業がさかんな宜蘭ですから、野菜の種類も豊富です。収穫したものはレストランで調理してくれるので、まさにもぎたてをすぐにいただくことができるのです。

採れたての山海の食材が味わえる

 また、自分で収穫したものでなくともレストランでその季節の食べ物をいただくこともできます。メニューはなく、その日の朝に採れたものや手に入ったものでシェフがオリジナルメニューを構成するのだそう。近海で獲れた魚介類と敷地内で採れた野菜と、土地の美味が山海におよぶというのがうれしいところ。さすがに旬のものばかりですので味の良さに感心すること必至。全体的にとても薄味な料理が多いのも、素材の味を引き立てるためでしょう。

 このように旬のものをシンプルにいただくスタイルはどうやら宜蘭県ではよく見られるようで、ほかのレストランでいただいた旬のタケノコも、ゆでて塩をかるくふっただけ。それでもびっくりするほど甘くておいしいごちそうです。ほかに、ミネラルたっぷりの温泉(冷泉)で育てられた「温泉トマト」なんていう、ちょっと興味をそそる食材もいろいろ。先住民のタイヤル族の村にあるレストランでは見たことも聞いたこともない野菜を使った料理が出てきます。

新鮮な海の幸も宜蘭の名物。お刺身も一般的に食されているそう
新鮮な海の幸も宜蘭の名物。お刺身も一般的に食されているそう
どこでも必ずと言っていいほど出てくる旬のタケノコ。その甘さに驚き!
どこでも必ずと言っていいほど出てくる旬のタケノコ。その甘さに驚き!
タイヤル族の村では家庭料理風の食事。野菜が多いのがうれしい
タイヤル族の村では家庭料理風の食事。野菜が多いのがうれしい

台湾名物!屋台グルメも充実

 せっかくの台湾、夜市だって楽しみたい! という人もご安心あれ。ローカルなのんびりした、それでいてなかなか規模の大きい夜市が羅東という町にあります。屋台がずらりと並んだ通りをぶらぶら歩いて、気になる食べ物があったらその場で買って食べ歩き。これぞ台湾! という王道の過ごし方です。
宜蘭県はネギで有名なので、ここでは必ずネギ餅をゲットしましょう。並んでいる屋台は地元の人からも高評価ということ。目の前で作っているところも見られ、目の前でどんどん焼き上げられていくので中身はアツアツ。

ネギが「これでもか!」 というくらい入っています。これひとつでおなか一杯になりそうなボリューム
ネギが「これでもか!」 というくらい入っています。これひとつでおなか一杯になりそうなボリューム

 思い切りがぶりといきたいところですが、口の中をやけどしないように気を付けて。ほかにも目の前でしぼってくれるフルーツジュースやバジルシードなどを用いたデザートなどの屋台もあり、ここだけでフルコースのディナーになってしまいそうです。

 台北まで車や電車であっという間に行くことができる羅東では昼間は学生も会社員もみな台北に行っていて、帰ってくるのは夜。だから夜市で食事を済ませる人も多く、平日でも地元の人々でにぎわっています。つまりこの夜市は羅東の「普段の顔」。観光客向けではないのです。

 そしてもうひとつ、宜蘭県に来たならぜひ体験していただきたいのが「民宿」。日本でいうところのペンションのような、個人経営の小さな宿のことなのですが、個人宅のようにオーナーの趣味が活かされていてどこもとっても味があります。内装や設備がまるでブティックホテルのような瀟洒な民宿もあり、いくつもはしごしたくなってしまうことは請け合い。大規模なホテルと違い、言葉が通じなくてもあたたかいもてなしの心を受け取ることができるでしょう。

田んぼに囲まれた民宿、「T2」。全部で5部屋あり、ひとつひとつデザインが違う。ママ友同士の共同運営だとか
田んぼに囲まれた民宿、「T2」。全部で5部屋あり、ひとつひとつデザインが違う。ママ友同士の共同運営だとか

 宜蘭県はあまり外国人観光客が多くありませんが、だからこそごてごてとした飾りがなくシンプルに土地の魅力を楽しむことができます。こういう旅行スタイルこそ、サステナブル。世界のトップに数えられる旅行地でも、地元の食材のみを用い、また地元の人々の普段の生活に触れ地元に貢献する、こうした旅行スタイルを模索しており、この先スタンダードになっていくかもしれません。地味な印象の宜蘭ですが、満足度の高い旅を提供してくれるでしょう。

宜蘭といえばホエールウォッチングでも有名。この日はイルカの群れに遭遇
宜蘭といえばホエールウォッチングでも有名。この日はイルカの群れに遭遇