南アメリカ大陸の広範囲にわたって縦横無尽に支流がはりめぐらされ、その沿岸部に住むものたちに肥沃な生活をもたらしているアマゾン川。その大自然と暮らしを訪ねる超豪華クルーズ『アクア・エクスペディションズ』は、彼らの“職場”でもあるアマゾン源流との共生の方法を追及。環境を破壊することなく、その地域に貢献することでツーリズムの持続が可能になると考えます。(写真・文 岩佐史絵)

小さな努力で共存を目指す

 南米大陸北部をほぼ横切るように流れやがて大西洋へと抜ける世界最大級の河川、アマゾン。いくつもの支流があり、その流域面積はなんとオーストラリア大陸ほどもある700万平方㎞。固有種の魚介類が数多く生息しているだけでなく、付近の植生もまた独特。雨季には辺りを水没させてしまうものの、その肥沃さから流域では独特な文化を形成しています。

 そんな巨大な川の源流はペルー北部にあるとされており、近年人気なのがイキトスの街を拠点に源流を訪ねる豪華クルーズ『アクア・エクスペディションズ』。「アクア」「アリア」の2種類の小型船を擁し、それぞれの総キャビン数は12室、16室、クルーの数は24名、飲み物を含む食事とアクティビティがすべてクルーズプランに含まれています。ジャングルの野生動物を探して小さな支流に分け入っていく冒険のあとにはゆったりとしたラグジュアリーホテルのような空間でリラックス、という夢のような体験ができるのです。

 ただ動物たちを船の上から眺めるだけでなく、乾季には沿岸に降り立ちジャングルの中を歩き、また付近の村を訪れてアマゾンの生活文化を見学。まさにエコツアー! といった内容ですが、一方で完全冷房完備の船内にセレブシェフの手によるメニューの数々などを見ると、本当ににエコなの?というのが気になるところ。クルーに聞いてみると、もちろんそこはちゃんと考えられていました。

船内の客室はホテル並みの快適な空間
船内の客室はホテル並みの快適な空間

 客船、および探検用の小舟もまた、非常に燃費のいいエンジンと音にも配慮。Wet ExhoustシステムによりCO2の排出量を最小限に抑えているといいます。海洋汚染に対する厳しいガイドラインをもつ国際海事機関(IMO)とアメリカ合衆国環境保護庁の定める基準を満たしているとのこと。また、船内で排出されるごみはすべて船内処理、汚水も船内に設置された浄水器によって完全に浄水され、川に戻されます。そういえば、船内ではゲスト用の飲用水はタンクに貯められ、持ち運び用のボトルに各自で詰めるシステムでした。ペットボトルを使わない工夫ですが、このボトルは自分用のお土産にもなるのでちょっとうれしいシステムです。

 食事はアマゾンエリアの食材をいろいろなスタイルで
食事はアマゾンエリアの食材をいろいろなスタイルで

 さらに、船内で出される料理の多くはアマゾンの食材を使用。なにしろメニューをプロデュースしたのはペルーで「ジャングルシェフ」として名高いペドロ・ミゲル・スキアッフィーノさん。世界最大の淡水魚パイチェ(ピラルク)などアマゾンで獲れる淡水魚や食材を使用することで知られています。セレブシェフのプロデュースでありながら地産池消をも目したメニューで、食材自体のカーボン・フットプリントにも配慮しているのです。

ゲストも協力・地域貢献に参加

 環境への配慮と同時に地元への貢献もまた、持続可能なツーリズムに必要不可欠な要素です。アクア・エクスペディションズではアクティビティにアマゾン沿岸の村訪問が含まれていますが、この訪問の際、参加者にも寄付などを募っています。

子どもたちのおやつはフルーツやナッツ
子どもたちのおやつはフルーツやナッツ

 村では小学校を訪ねることが多いので、鉛筆やノートなどの文房具を推奨。チョコレートや飴といった、現地で手に入らないお菓子なども非常に子どもたちに喜ばれますが、実はあまり推奨されていません。その理由は歯ブラシや歯磨き粉もそう簡単に手に入らず、まして歯医者へは船に乗ってイキトスまで行かなくてはならないという環境のコミュニティにおいてはこうした“サプライズ”は害になってしまう可能性もあるから。その時だけ喜ばれるのではなく、コミュニティの人々に長く恩恵をもたらすものでなければ、という考えに基づいています。

 船内での忘れ物について、パスポートや携帯電話といった貴重品でない限り、現地のコミュニティに寄付することをお勧めしたりも。問い合わせのあった人の多くが寄付することを選ぶのだそうです。

 そういえば、船内でのランドリーについても、実はサービスがあるもののあえて案内はしていない、とのこと。浄水には限度があるためですが、乗客で洗いたいものがある人は、バスアメニティのオーガニック石けんでシャツなどを自分で手洗いしていました。これを「サービスが悪い」と思うかどうかはそれぞれですが、こういうところで少しでも協力ができるのなら、と理解を示す人のほうが多いようです。もちろん、手洗いでは難しいような汚れの場合は喜んで洗濯してくれます。

バスアメニティの素材も地元のもの。もちろんオーガニック
バスアメニティの素材も地元のもの。もちろんオーガニック

 最終日のアクティビティにも、ジュゴンの保護センター訪問が含まれており、水質汚染や乱獲といった問題について詳しく話を聞くチャンスがあります。いいところだけでなく、悪いところも含めてアマゾンの真の姿を目の当たりにすることができるのが、このクルーズの特徴。豪華で贅沢なことがクルーズの醍醐味ですが、観光客がやってくることによって自然破壊につながったり、あるいは動物や地元の人々を見世物にするだけになってはいけない。地元とゲストが互いに「Win-Winの関係」になることこそが理想的なツーリズムであり、そこを追及してこそ長く続くものである、ということを改めて感じさせる旅でした。

(2014年4月15日)